Q11 取締役の要件 II-Q11
 
 取締役の資格、員数、任期及び選解任の要件について、どのような改正がされたのでしょうか。



 今回の改正では、株式会社と有限会社を一本化したこと、さらに社会情勢の変化に伴い、取締役の資格、員数、任期及び解任の要件について、次のような点を見直しています。


1 取締役の資格

 現行法では、取締役の資格について、一定の欠格事由に該当する者は取締役になることができないと制限する一方(商254ノ2、有32)、所定の欠格事由以外の事由によって取締役の資格を限定することは、各社の具体的事情に応じて不合理な内容でない限り、定款で定めることによって許容されています。

 ただし、株式会社においては、定款によっても取締役の資格を株主に限ることはできないと規定されています(商254(2)。なお、有限会社においては、かかる制限規定はなく、定款で取締役の資格を株主に限ることも許容される)。

 これに対し、会社法では、次に述べるとおり、まず、取締役の欠格事由について、社会情勢の変化等を踏まえて見直し、欠格事由の追加・削除を行っています。

 さらに、定款による取締役の資格制限については、有限会社と株式会社を新法で一本化したことに伴い、非公開会社に限って許容することとしました。


◆取締役の欠格事由

 現行法では、a.成年被後見人または被補佐人、b.破産手続開始決定を受けて復権していない者、c.商法、特例法、有限会社法または中間法人法に定める罪により刑に処せられ、その執行を終わった日または執行を受けないことになった日から2年を経過していない者、d.前号に定める罪以外の罪により禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたは執行を受けないことに至るまでの者(ただし、執行猶予中の者を除く)、は、取締役になることができません(商254ノ2、有32)。

 このうち、破産者が欠格事由とされているのは(b.)、破産財団の所属財産について管理処分権を有しない者が会社の代表取締役として会社財産の管理処分権を有するのはおかしいという考えに基づくものと解されています。

 しかし、昨今の経済情勢や、会社債務につき経営者に連帯保証を求められることが多い中小企業の実態に照らすと、会社の倒産により代表者も破産せざるを得ず、その破産者が再生するために会社を興してやり直そうとしても欠格事由に該当してしまって、再生するのに時間がかかる結果となっており、酷であると考えられます。また、免責決定を受けるまで取締役になることを禁じるよりも、早期に会社の取締役として経済的再生の機会を与えた方が、国民経済としても有益であるといえます。

 そこで、会社法では、破産者を取締役の欠格事由から外し(会331(1)参照)、破産者に早期の再生の途を確保させることとしました。欠格事由には該当しなくても、取締役選任議案を承認する際、破産者を取締役に選任することの是非が問われることになるため、特に問題はないものと思われます。

 また、現行法では、商法、特例法、有限会社法または中間法人法に定める罪により刑に処せられた者について、それ以外の罪により刑に処せられた者よりも厳格な取扱いを定めています(c.)。これは、会社法秩序を破った者については、それ以外の罪を犯した者よりも、会社の経営を担う取締役としての適性がないという趣旨に基づくものです。

 しかし、実際には、商法、特例法、有限会社法及び中間法人法以外にも、会社法秩序を定める法律は多数存在するところです。特に、上場企業においては、商法以上に証券取引法によって様々な規律を受けており、これらの法律に違反した者を、商法等に違反した者よりも有利に取り扱う理由はありません。

 そこで、会社法では、現行法の欠格事由に定められている法律(商法、特例法、有限会社法及び中間法人法)以外にも、証券取引法、民事再生法、会社更生法などの所定の罪を追加し、これらの罪を犯した者についても、商法等に違反した場合と同様、他の罪を犯した者よりも厳しい取扱いをすることとしました(会331(1)三)。


◆定款による資格制限

 現行法では、株式会社については、定款によっても取締役の資格を株主に限ることはできませんが(商254(2))、有限会社については、定款で取締役の資格を株主に限ることも許容されています。

 これは、所有と経営の分離された公開会社においては、取締役は広く人材を求めるべきであって、株主に限るべきでないという趣旨に基づくものであり、したがって、非公開的な有限会社については、かかる制限は設けられていなかったものと考えられます。

 しかし、今回の改正では、有限会社と株式会社を一本化し、株式会社においても非公開的な会社運営をできるように改められることになりました。

 そこで、定款による資格制限についても、非公開会社においては従前の有限会社と同様の規律に服されることとし、原則として、定款で取締役の資格を株主に限定することは許されないが、非公開会社においてはかかる資格制限も許容されることとされました(会331(2))。


2 取締役の員数

 現行法では、株式会社においては、取締役を3人以上選任し(商255)、取締役会を設置しなければならない(商260参照)とされていますが、有限会社においては、1人または数人の取締役を選任すれば足り(有25)、取締役会という機関は設けられていません。

 これは、所有と経営の分離した株式会社においては、業務執行を監督するために3人以上の取締役で構成される取締役会において議論・検討することが必要ですが、所有と経営の分離していない有限会社においては、そこまで厳格な監督体制を置かなくても足りると考えられたものと解されます。

 しかし、今回の改正では、株式会社と有限会社を一本化し、株式会社においても非公開的な会社運営をできるように改められることになりました。

 そこで、取締役の員数についても、従前の有限会社と同様の設計を採ることができるようにするべく、会社法では、取締役を3人以上置かなければならないのは取締役会設置会社に限ることとし(会331(4))、取締役会を設置していない非公開会社においては、従前の有限会社と同様、取締役1名でも足りることとされました(会326(1))。


3 取締役の任期

 現行法では、株式会社においては、取締役の任期は2年を超えることはできませんが(商256(1))、有限会社においては、取締役の任期の制限はありません。

 これは、所有と経営の分離した株式会社においては、株主による取締役に対する監督の機会として、定期的に株主に対して取締役の信任を問うべきですが、所有と経営の分離していない有限会社においては、社員の変動も少なく、社員自身が経営を担っている会社も少なくないため、定期的な取締役の信任は必要とされなかったものと解されます。

 しかし、非公開的な運営を行う株式会社においては、従前の有限会社と同様、頻繁に取締役の信任を問う機会を設けることは必要ないという会社も出てくるものと思われます。

 そこで、会社法では、原則として取締役の任期を2年としつつ(会332)、非公開会社においては定款の定めにより任期を10年まで伸長できることとしました(会332(2))。


4 取締役の解任要件

 現行法では、株式会社においては取締役を解任するためには株主総会の特別決議が必要ですが(商257(2))、有限会社では普通決議で足りるとされています(有32で商257(2)を準用せず)。

 今回の改正で有限会社と株式会社を一本化するにあたり、この解任要件については、非公開会社に限らずすべての会社について、原則として取締役の解任決議の要件を普通決議とすることとされました(会341)。

 ただし、累積投票によって選任された取締役の解任要件については、特別決議が必要とされています(会309(2)七)。これは、少数株主の意思を反映させるために累積投票制度を採用して取締役を選任したにもかかわらず、これが普通決議によって大株主の意思に基づき解任されることになれば、わざわざ累積投票制度を採用した意味がなくなってしまうからです。

 なお、監査役についても、独立性を確保する観点から、解任決議の要件は特別決議のままとされています(会309(2)七、343(4))。

 そのほか、定款で取締役の解任要件を加重することは可能と解されます(会341の( )書参照)。



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