Q3 競業禁止義務の範囲 I-Q3
 
 事業を譲渡した会社の競業禁止義務の範囲について、どのような改正がなされましたか。

 
 
 1.  現行商法第25条第1項の規定については、「営業」の語が「事業」に改められた他は改正はなされず、同様の規定が、会社法第21条第1項に引き継がれています。すなわち、事業を承継した会社(「譲渡会社」)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は同一の事業を行うことができません(会21(1))。「当事者の別段の意思表示がない限り」とあることからわかるとおり、本項は任意規定です。
 
 
 2.  現行商法第25条第2項は、その内容が一部改正されて会社法第21条第2項に引き継がれています。

 すなわち、現行商法第25条第2項は、営業譲渡人が同一営業をしない旨を特約した場合は、その特約の効力は、「同府県及び隣接府県内」かつ「30年」を超えない範囲内でのみ効力を有する、と規定します。これは、譲渡人の営業の自由を過度に制限しないようにとの趣旨とされています。この現行規定によれば、例えば埼玉県で営業をしていた譲渡人がその営業を譲渡し、あわせて「関東地方では今後50年間同一営業はしない」と特約したとしても、その特約のうち「関東地方では」及び「50年間」との約定部分は無効とされ、「埼玉県及び隣接県で」「30年間」同一営業をすることが禁止された特約になってしまうことになります。したがって、場所についてだけ見れば、当事者間で「譲渡人は関東地方では同一営業はしない」と合意していても、そうした合意は効力を有さず、譲渡人が例えば当該合意を無視して神奈川県で営業をしても、譲受人は契約違反を主張できないことになる訳です。

 しかし、30年という限定は、競争促進の観点からは一応の合理性が認められるとはいえ、「同府県及び隣接府県」という限定は、今日の企業規模に鑑みると、契約自由に対する過度の制約と考えられます(上記の例を見れば、その不合理さがわかると思います)(江頭憲治郎「『会社法制の現代化に関する要綱案』の解説〔VIII〕」商事法務1729号13ページ)。

 このため、会社法第21条第2項では、「譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から30年の期間内に限り、その効力を有する。」と定められ、現行商法第25条第2項のうち「同府県及び隣接府県」との文言が削除され、30年という期間の制約のみ残されました。すなわち、会社法第21条第2項は、30年という期間のみ、契約自由の原則に対する法による制約をなお認めたことになります。



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