Q2 商号の登記 I-Q2
 
Question
 商号の登記に関する商法第19条・商業登記法第27条による規制が廃止されることとなった趣旨を教えて下さい。

 
Answer
 
 1.  現行商法では、登記した商号については、同一の営業のために、他の者が同一の商号を登記することはできない、とされています(商19)(同条は、会社のみならず商人一般に適用される規定)。

 また、商業登記法では、商号の登記は、同一市町村内においては、同一の営業のため他人が登記したものと判然区別することができないときはすることができない、とされています(商登27)。そして、このような同一市町村内で、同一の営業のため他人が登記したものと判然区別することができない商号に関する登記または仮登記の申請があった場合には、登記官は(補正が可能なもので実際に補正がなされない限り)その申請を却下しなければなりません(商登24)。

 このように、例えば会社設立や移転、商号変更等によって、会社の商号に関する登記を申請する場合、登記所としては、その申請を受理するかどうかにつき、すでに登記済みの商号を有する会社と申請する会社とが「同一の営業」に属するものかどうかの審査を行うことになります。ここでいう「同一の営業」に属するかどうかは、会社の「目的」欄の記載を比較することによって審査することになりますが、実務上、法務局における会社の「目的」欄の語句の使用等の基準が相当厳格に運用されているため、当事者による商号の登記が可能かどうかの事前の確認調査にかなりの手間がかかる、あるいは新規の事業形態で用いられる用語が事業目的として認められにくい、などの問題点が指摘され、その柔軟化をはかるべきという意見が出されていました(法務省民事局参事官室「会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明」第二部1参照)。

 この点、要綱試案にも、「商号の登記に係る規制を廃止する場合には、『会社の目的』として定款に記載できる内容を柔軟化することが可能となる。」と記載され(「会社法制の現代化に関する要綱試案」第二部1(注2))、また、法制審議会会社法(現代化関係)部会でも、商法第19条の「類似商号の問題は、実務的にはむしろ会社の目的の記載の在り方を柔軟化したいということが大きなねらい」である、とのコメントがなされています(法制審議会会社法(現代化関係)部会第8回会議議事録参照)。

 また、現行の商法第19条は、同一商号の登記が排除される地理的範囲を同一市町村に限定していますが、現代のように商取引の範囲が拡大している場合には、その適用範囲が狭すぎる、あるいは、あまり意味のない規制である、という指摘もありました(「会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明」第二部1、近藤光男著『商法総則・商行為法〔第4版補正版〕』有斐閣2005年76ページ)。

 以上より、現行商法第19条の規制は過剰または不要なものであると判断され、その結果、同条の規制は廃止され、会社法には盛り込まれないこととなりました。
 
 
 2.  なお、上述の現行商業登記法第27条は改正され、「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあっては、本店。以下この条において同じ)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。」(改正商登27)という規定になりました。これは、すでに登記されている他の会社と同一の住所の会社は、行う営業の如何にかかわらず、当該他の会社と同一の商号を登記することができないことを意味します。

 商法第19条及び現行商業登記法第27条を廃止しても、不動産登記等において法人は住所と商号とによって特定されることとされているため、同一商号・同一住所の会社が複数存在することを認めるのは適当ではありません。現在の登記実務上も、同一商号・同一住所の登記の存在は認めない取扱いがなされていましたが、改正商業登記法第27条は、この現行の登記実務の取扱いを明文化したものです(「会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明」第二部1)。



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