IV-Q22 |
Q22 税理士の報酬 |
税理士法改正は、納税者の利便の向上に資することを目的としており、一部を除き平成14年4月1日から施行されています。主な改正ポイントは以下のとおりです。 (1) 税務訴訟等において裁判所の許可を要することなく、税理士が補佐人となる制度の創設 (2) 受験資格要件の緩和と試験科目の免除制度の見直し (3) 計算事項等を記載した書面を添付した税理士からの意見聴取制度の拡充 (4) 税理士法人制度の創設 (5) 会員の研修に関する規定が会則の絶対的記載事項に追加 (6) 税理士業務の報酬に関する規定および広告規制が会則の絶対的記載事項から削除 (7) 罰則規定の強化、罰金額の引上げ ご質問の観点からは、(6)の報酬規定、広告規制の廃止が重要と思われます。従来報酬規定は最高報酬限度という形で明示されていましたが、今回の改正で報酬規定が削除され、各税理士が報酬の内容について明確にしたうえで、納税者の納得を得られるような報酬基準を独自で設定することになりました。同時に、独占禁止法の不当な取引制限の禁止規定上問題があるとされた広告規制が、例外的な禁止事項を除き廃止されました。
一概に言えることではないでしょうが、報酬規定の撤廃がバブル崩壊後の税理士報酬下落傾向に拍車をかける傾向にあるようです。ホームページを開設する税理士は増加しており、その中で報酬を開示している例も多く、中には顧客紹介者には海外旅行招待といった税理士もいます。企業側も複数の税理士を比較して顧問税理士を決めるといった例もめずらしくなくなってきています。また、パソコンで利用しやすい会計ソフトも普及し、振替伝票まで書いている企業であれば、税理士にコンピュータ入力を依頼するより自社で入力し、税理士にチェックしてもらうだけで充分な場合も多いのが現状です。税理士の供給サイドでも若手税理士が勤務から開業へのシフトが始まっており、公認会計士の税理士開業も増加の傾向にあります。 また、高度成長期に創業した中小企業の事業承継の時期に符合して、税理士事務所も代替わりの時代となっています。企業経営者がそうであるように、地盤のある2代目税理士にも、父親との方針の違いや引き継いだ企業との軋轢に悩む人が多いのも事実です。お互いにうまく承継できればよいのですが、何しろ人間関係も重要な要素となってくる業態のため、企業の代替わりと呼応して税理士も替わるケースもあります。上記報酬規定・広告規制の廃止は、そうした流れをいっそう強くするように思います。 そうした規制緩和の中、税理士自身も生き残るための方策を模索し始めています。税理士法人の設立もそうですが、税務だけではなく法律、労務といった企業をめぐるあらゆる問題をワンストップで解決できる士業のネットワークの構築もその表れです。 業務自体も従来の記帳代行的なものから付加価値の高い事業再編・再生といったコンサルティング業務へと裾野を広げつつ移行しています。企業同様税理士も厳しい環境下でレベルアップを図っているのです。そういう意味で税理士の質も向上していく時代となりました。 なお、税理士に関する情報は信頼できる知人の紹介が安心と思われますが、最近ではホームページでの問合せも可能ですし、税理士と企業を仲介する業者も出てきています。お見合いと同じで、情報網を張りめぐらせることが、能力があり相性のよい税理士とめぐり合う方法だと考えます。また、同様の動きが弁護士等の専門家一般に始まっていることも認識しておいてください。 専門家の適正報酬は一概には言えませんが、少なくとも透明性が上がっていることは間違いありません。ただ、通常税理士とは長いつきあいとなりますので、価格のみにとらわれずサービスの水準と比較しての適正水準という認識を持つようにしてください。 |