目次 IV-Q20


Q20 購入とリ−スどちらが得か

Question 工場設備の導入を検討していますが、購入によるべきかリース契約によるべきか迷っております。どちらが得なのか教えてください。

Answer
ポイント
(1) 一般にリースといえば、ファイナンス・リース(金融取引)のことです。
(2) リース取引のメリットとデメリットを、十分に理解しましょう。
(3) 台数管理に手間のかかる車両を多く保有している場合は、リースが得です。
(4) 自己資金に全く問題ない場合は、購入が得です。


 解 説 ▼
【1】リースの分類

 リースには、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2種類があります。

 ファイナンス・リースは、ユーザー(借り主)の希望する物件をサプライヤー(設備販売者)からリース会社が購入し、ユーザーがリース会社から長期間賃貸借します。支払リース料に中に、物件の購入代金、金利、償却資産に係る固定資産税等が含まれており、中途解約することができません。一方、オペレーティング・リースとは、通常レンタル(不特定多数、汎用性、反復して賃貸を特徴)と呼ばれているものです。

 リース取引の多くはファイナンス・リース(本質は、金融取引)なので、以下、リースといえばファイナンス・リースを指すものとします。

【2】リース取引のメリット、デメリット

 (メリット)
 (1)  購入資金が不要なので、銀行借入れ枠や自己資金を他に使用できるとともに、担保も不要ですので、担保枠がない場合でも利用できます。
 (2)  減価償却計算や、償却資産に係る固定資産税の申告、保険の付保等の固定資産管理コストが軽減でき、事務処理が合理化できます。
 (3)  リース料はリース期間中一定で、全額経費処理できます。
 (4)  リース期間は法定耐用年数より短く設定できるため、購入に比べて早期の償却ができます。(法定耐用年数10年未満であればその概ね7割相当がリース期間になるといえます。)

 (デメリット)
 (1)  物件の所有権がリース会社にあるため、残存価値はリース会社に帰属します。
 (2)  中途解約の場合、未経過リース料の支払および、損害金の負担が生じます。
 (3)  リース契約終了後も物件を使用する場合、以後1年間ごとに1か月分のリース料を支払わねばなりません。
 (4)  通常の保守管理義務が生じます。

【3】具体例

ビジネス電話機一式   購入価格   2,000,000円  (耐用年数6年)
  リース料 月額 37,500円  (リ−ス期間5年)

 (1)  合計支出額で比較すると、リース料総額の方が、250,000円高くつきますが、この増額分が上記のメリット・デメリットで述べた取得資金に対する金利および固定資産管理費用等のコストといえます。

 (2)  買取りの場合に発生する減価償却費とリース契約の場合のリース料を新たな経費と考え、その節税効果額をキャッシュの戻りと考えると、両方の現金総支出額は次のようになります。ただし、税負担率は単純に50%とします。

買取りの場合 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 総計
購入額 −2,000,000            
減価償却費 638,000 434,478 295,879 201,494 137,217  93,445  
節税効果額 319,000 217,239 147,940 100,747 68,609 46,723  
総支出額 −1,681,000 217,239 147,940 100,747 68,609 46,723 −1,099,742
リースの場合 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目   総計
リース料 −450,000 −450,000 −450,000 −450,000 −450,000   2,250,000
節税効果額 225,000 225,000 225,000 225,000 225,000    
総支出額 −225,000 −225,000 −225,000 −225,000 −225,000   −1,125,000

 (3)  合計支出額を単純比較すれば(1)のように250,000円での買取りが有利となりますが、(2)のように節税効果を加味すれば、その差は25,000円に縮まります。

 このケースの場合でいえば、買取りかリースのいずれを選択するかは、リースの「メリット」の部分にいかに重きをおくかによります。リースの「メリット」を採るのであれば25,000円の金額は問題にならなくなり、リース契約を選ぶことになります。

 なお、私見としましては、ポイントにも述べたように、自己資金に全く問題がなければ、買取りが有利な場合が多いと思います。

 

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