目次 II-Q13


Q13 連結納税制度の概要

Question 連結納税制度が導入されているそうですが、それは上場企業のためのもので、私たち中小企業には関係ないと考えてよいのでしょうか。適用できるのであれば、どのような効果があるのでしょうか。

Answer
ポイント
(1) 中小企業でも適用可能です。
(2) 連結グル−プ内の所得と欠損が通算でき、企業分割が容易になりました。
(3) 交際費課税、寄付金、受取配当金などで、従前よりデメリットが発生することもあります。


 解 説 ▼
【1】連結納税制度導入の背景

 連結納税制度は、「連結財務諸表」を提出している上場企業等だけに適用されるものではなく、基本的には内国法人であれば適用できます。平成13年度の税制改正で企業組織再編税制が整備され、企業の合併・分割が従前よりも容易になりました。それに伴って企業グループを1つの納税単位と考えて課税する連結納税制度が導入されたわけです。

 多くの中小企業では、異なる事業部門を抱えている場合に、ある事業部は収益性が高いが、ある事業部は不採算であることがしばしばあります。そこで、権限と責任を明確にするために、いっそ、両部門を別会社にしてみてはと考えたときにネックになるのが、企業分割時の課税問題(これは、企業組織再編税制で手当てされました。)と、もう1つ、不採算部門があると企業全体としてはその部門の損失が節税効果になっているために企業分割をためらってしまう問題です。つまり、会社分割(別会社化)すれば、それ以前よりもグループ全体として、納税額が増えるのではないかと懸念されていたのです。その手当てとして、連結グループ全体を1つの法人とみなして、グループ内の所得を合算して納税する連結納税制度が導入されました。連結納税制度の意義と概要は、以下のとおりです。

【2】連結納税制度の意義

 (1)  企業グループ内の個々の法人の所得と欠損を損益通算します。
 (2)  経済実態が実質的に1つの法人とみられる企業グループを1つの納税単位として課税します。
 (3)  国際競争力の維持・強化と構造改革に資する企業組織再編成の仕上げといえます。

【3】契約に基づく対価性のあるものは交際費ではない

 (1) 対象会社
(a)親会社と、親会社が直接間接に100%支配関係にある子会社
(b)内国法人であること
(c)親会社は普通法人と協同組合
(d)子会社は普通法人のみ
 (2) 制度の選択 
(a)各企業の任意
(b)いったん採用すれば継続して適用すること
 (3) 事業年度
(a)親会社の事業年度を連結納税の事業年度とする
(b)事業年度の異なる子会社には、みなし事業年度を適用(親にあわせる)
 (4) 申告と納税
(a)親会社が連結所得に対する法人税の申告・納付を行う
(b)各子会社は連帯納付責任を負う
(c)各子会社は連結所得の個別帰属額等を記載した書類を提出
 (5) 連結所得
(a) 連結法人株式の配当は負債利子を控除せず全額損金不算入
(b) 連結グループ間の寄付金は全額損金不算入(受入側受贈益)
(c) 交際費は親会社の資本金額等を適用
(d) 連結グループ内法人間取引は時価による。そこで、固定資産や金銭債権等内部取引によるグループ内の譲渡損益はグループ外への移転まで、移転法人側で繰り延べられる。よって、各法人の法的独立性を優先し、税金は連結調整後で支払いするために、税効果会計の認識が必要となる可能性が大。

 

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