目次 III-2


2.企業会計と税務の相違―減価償却

 Question3-2

 企業会計上、ソフトウェアの減価償却の方法は制作目的に従って決められていますが、税務上もこの方法が認められるでしょうか。


税務上の減価償却方法及び耐用年数は硬直的に定められているため、企業会計独自の減価償却方法は税務上では認められません。


 Answer

(1) 企業会計上の減価償却

 企業会計上、ソフトウェアの減価償却は次のように行う必要があります。

(1)  市場販売目的のソフトウェア
 原則として3年以内で、そのソフトウェアに最も適した方法で減価償却を行う必要があります。実務指針18では「見込み販売数量に基づく方法」、「見込み販売収益に基づく方法」が例示されており、残存有効期間の均等配分額以上の償却をすべきこととされています。また、見込み販売数量、見込み販売収益は毎期見直しを行う必要があります。

(2)  自社利用のソフトウェア
 そのソフトウェアに最も適した方法で減価償却を行う必要があり、一般的には、5年以内の年数での定額法が合理的と考えられています。耐用年数は毎期見直しを行う必要があります。


(2) 税務上の減価償却方法

 一方、税務上、ソフトウェアは減価償却資産としての扱いを受け、その減価償却方法は定額法と規定されています(法令48(1)四)。また、その耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第三、第八)において販売目的・開発研究用のソフトウェアは3年、その他は5年とされています。

 なお、税務署長の承認を予め受けた場合は、その他の特別な償却方法を採用することができます(法令48の2)が、合理的な根拠により疎明することが必要となります。


 このように、(1)(2)により、自社利用目的のソフトウェアにおいて税務上と同じ5年の耐用年数による定額法を採用する場合などを除き、実務指針で例示されているような企業会計独自の減価償却方法は合理的根拠での疎明が必要となるため、減価償却費の過大計上に関して申告調整を行う場合が多いと思われます。

 また、税務上、中古ソフトウェアを取得した場合には、残存使用可能期間の見積りによる償却が認められています(耐年令3(1)一)。

 ソフトウェアの減価が時間の経過あるいは使用の頻度に応じて生じるものではなく、その他の減価償却資産とは減価態様が異なっているため、このような償却が認められる余地は小さいと考えられますが、使用可能期間が限定されている等の場合には、企業会計上と同じ耐用年数に基づく償却ができるものと考えられます。

ソフトウェアの区分 企業会計上の
減価償却方法
税務上の減価償却方法 税務上認められる企業会計上の減価償却方法
市場販売目的 3年以内での見込み販売数量に基づく方法、見込み販売収益に基づく方法等、当該ソフトウェアに最も適した方法 定額法(耐用年数3年) 企業会計独自の減価償却方法は、税務上は合理的根拠により疎明し、税務署長の承認を受けた場合のみ認められる
自社利用目的 5年以内の年数での定額法等、そのソフトウェアに最も適した方法 定額法(開発研究用は耐用年数3年、その他は耐用年数5年) 同上
中古取得 5年以内の残存使用可能年数での定額法等、そのソフトウェアに最も適した方法 定額法(耐用年数は原則的には上記に準じて3年あるいは5年。残存使用可能期間の見積りによる耐用年数も可。ただし、開発研究用は簡便法の適用あり(耐年省令3(1)二)) 同上

 

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