3 改訂会計基準への対応策
 
Question

改訂会計基準に対して、具体的にはどのような対応策が考えられるでしょうか。
  

 
Answer

1.現状の把握

(1) 退職給付債務の計算
 まず、退職給付債務の計算をしてみる必要があります。この場合、将来の動向、すなわち昇給率や脱退率等の変動要因について、できるだけ正確な見積りを行うことが大切です。

(2) 年金資産の状況把握
 年金資産の時価による評価、及びその資産内容の把握をする必要があります。特に、年金資産について、どの程度の運用収益率が見込めるのか、あるいはリスク資産がどの程度含まれているか、また換金の容易性についての情報をつかんでおく必要があります。

(3) 年金債務と年金資産の比較
 年金資産と退職給付債務を比較して、年金資産が上回っているのであれば基本的に問題ありません。しかし、このような状況の会社は非常に少ないと考えられます。かなりの会社では退職給付債務の方が相当上回っている状況(不足)であると思います。
 そこで、会社の積立不足額が純資産や経常利益と比較して、どの程度であるのかを把握し、次の対応を考えることになります。負担能力があればできるだけ早期の償却が望ましいと考えられます。不足が大きいか小さいかによって、企業評価に影響し、それが調達金利に影響する事態も想定されます。また、IASでは5年以内の償却が求められています。今後、IASでの財務諸表の作成を検討されている会社では、この5年間での償却も念頭に置いておく必要があります。


2.具体的対応策

 以上のデータが揃った段階で今度は具体的な対応策の検討に入ります。不足額と負担能力によっては従業員への給付水準の見直しをも検討せざるをえないことも想定されます。したがって、組合との交渉や従業員のモチベーションをどう維持していくか等の重要な課題を解決していく必要があります。ここからは経営上の重要な意思決定の領域になってきます。

(1)  退職給付債務に関する対策
(イ)退職給付制度の見直し
 退職給付制度を見直す際、単に給付水準を引き下げるということだけでは不足であると考えられます。例えば退職金以外の福利制度を充実したり、あるいはストックオプションを付加する等、トータル・コンペンセーション*を従業員に提示し、魅力を失わない総合的な人事制度の提案を行うことが重要になります。
トータル・コンペンセーション
 給与や賞与等のコンペンセーション(報酬)と福利厚生や退職給付コスト等のベネフィトをあわせた従業員に対する総合報酬をさします。

(ロ)拠出型年金の採用
 拠出型年金とは今話題になっている「確定拠出型」の年金制度です。この制度を採用した会社は、少なくともその後の前提条件変動等からの影響を受けずに済み、長期的な経営計画の見通しを立てやすくなります。
  
(2)  拠出型年金の採用
(イ)年金資産の状況把握
 年金資産の利回り、株式や外貨建資産等リスク資産の実態を自己の運用資産と同様の配慮をもってモニターしていく必要があります。

(ロ)運用利回りの検討
 リスクにあったリターンが得られているか、あるいは必要とされる利回りを確保しているかどうかの検討が必要です。運用利回りがよい場合、負担が減り、確実に会社業績に寄与します。
 今後は、リスクとリターンを比較考量した運用委託先の選定や運用方法の検討がますます重要になってきます。

(ハ)過去勤務債務の償却
 今後、過去勤務債務の償却の加速化や利差損の早期穴埋めなどの対応により、問題の早期解決を図り、企業評価を高めていく戦略をとるところも増えてくると考えられます。ただし、これにはかなり多額の資金拠出や、大きな損益上の負担が伴います。
  
(3)  会計上の対応策
(イ)決算方針の策定
 将来の収益の予測に基づいて、移行時の差額を何年で償却するかの方針決定をする必要があります。一旦選択した方針は、基本的にはその後の処理を拘束しますので、あらかじめ長期の予測を立てておく必要があります。

(ロ)タイムリーな資料入手体制の構築
 原則的には期末日のデータが必要になります。外部の機関による退職給付債務の計算も必要であり、また連結ベースでの処理が求められることから、事前に関係会社間でよく打合せをしておく必要があります。

(ハ)決算早期化に対応して
 会計ビッグバンでは、確実に会社の財務諸表作成の手数も増える上、複雑な退職給付会計等をこなしていく必要があります。また人材の養成も必要になってきます。また、これらをこなしていくには力のある会計事務所との協力も必要になってくるでしょう。

 

次ページ