| III.退職給付 |
| 1 退職給付債務の考え方 |
1.退職給付債務について 退職給付債務の認識や測定方法については、改訂日本基準である「退職給付に係る会計基準」において次のように定義されており、これはIASと同様のものといえます。 『退職給付債務とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に従業員に支給される給付のうち認識時点までに発生していると認められるものをいい、割引計算により測定される。』 すなわち、一時金支給見込額と年金支給見込額を合計した企業の負担すべき総額を、実際に支払うまでの期間をもとに現在価値に割り引いた金額であり、これは「退職負債総額の時価評価額」といえます。 このような退職給付債務の把握方法には、次のように数種の考え方がありますが、改訂日本基準、IASともに(1)の予測給付債務(PBO)の考え方を採用しています。 (1)予測給付債務(Projected Benefit Obligation:PBO) 予測給付債務とは、退職金制度に基づき、従業員の現在時点までの勤務期間に割り当てられた給付額について、制度が存続することを前提に、かつ予測される将来の事象(昇給、退職、死亡を含む)が生じる見込みを反映して算定された数理的現価をいいます。 (2)累積給付債務(Accumulated Benefit Obligation:ABO) 累積給付債務とは、PBOのうち、将来の昇給分を見込まない前提で算定された数理的現価をいいます。 (3)確定給付債務(Vested Benefit Obligation:VBO) 確定給付債務とは、ABOのうち、受給権を取得している従業員の給付額の数理的現価をいいます。 (1)〜(3)の関係をイメージとして図示すると、次のようになります。
2.年金数理計算方式について 1に記載のような退職給付債務の現在価値を測定するためには、年金数理計算方式の採用が必要となります。 年金数理計算方式には様々な方式がありますが、それらを体系的に分類するとおおむね以下のようになります。
の方式が、今回の改訂日本基準で採用された方式です。なお、平成11年1月19日公表の「退職給付会計に係る実務指針に関する論点整理」(以下、「論点整理」)ではこれを期間基準とされています。 退職給付に関する数理計算方式においては、その長期的性格から、時間価値を考慮する方式が採用されますが、それは予測給付評価方式と発生給付評価方式に大別され、それぞれ次のような考えに基づいています。 (1)予測給付評価方式 予測給付評価方式とは、退職給付が従業員の過去と将来の全勤務期間にわたって均等に発生するという考え方に基づく評価方法です。 この方式による算定手順は、(1)退職給付見込額を計算し、(2)各勤務期間に配分される額の現在価値が均等又は平準的になるように按分するものです。 予測給付評価方式は、年金掛金の平準化に重点が置かれた計算方式であり、各期の退職給付の負担額は比較的平準化することとなります。この方式の代表例としては、わが国の100名以上の適格年金や厚生年金基金の加算部分で採用されている加入年齢方式があげられます。 (2)発生給付評価方式 発生給付評価方式とは、退職給付が従業員の労働の提供に応じて発生するという考え方に基づく評価方式です。 算定手順としては、(1)退職給付見込額を計算し、(2)それを勤務期間の各期に配分し、(3)配分した金額を現在価値に割り引くこととなります。 発生給付評価方式は従業員の勤務に対する報酬として退職給付コストを把握するものであり、企業会計上の発生主義の考え方とも整合するものですが、この方式によると、各期の退職給付の負担額は逓増することとなります。 発生給付評価方式の代表例としては、IASや改訂日本基準で採用されている予測単位積増方式(退職給付見込額を全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法であり、「論点整理」でいう期間基準)があげられます。 それ以外にも改訂日本基準では、給与比例方式(給与基準)が認められています。 これは、全勤務期間の給与総支給額に対する各期の給与額の割合に基づいて計算する方法ですが、わが国では一般に全勤務期間の給与額を体系的に定めている場合が多く、退職給付の算定基礎となる各期の給与額に各期の労働の対価が合理的に反映されていることから認められるものです。 一方、支給倍率基準については、改訂日本基準では原則として認められていません。 この方式は全勤務期間の支給倍率総額に対する各期の支給倍率の割合に基づいて計算する方法です。わが国では一定の勤務期間を超えると支給倍率が逓増することが一般的であり、勤続報償的な側面を有していることから、支給倍率が勤続年数の増加に対してほぼ一定で増加しているなど、支給倍率の増加が労働の対価を合理的に反映されていると認められる場合を除いては使用できないことになっています。 3.数理計算上の仮定について 発生給付評価方式による退職給付計算に当たっては、数理計算上の仮定を用いる必要があります。 IASでは、数理計算上の仮定は人口統計上の仮定(死亡率、従業員の退職率など)と財務上の仮定(割引率、将来の給与及び給付水準、年金資産の期待収益率など)から構成されるとしています。また、これらの仮定は偏向せず、かつ、互いに整合したものでなければならないとされ、合理的な見積計算を行うための要件を規定しています。 改訂日本基準においても同様の仮定を用いますが、このうち退職給付債務を計算するときに使用する割引率に関して、両基準に若干の違いがあります。 改訂日本基準では、一定期間(「論点整理」ではおおむね5年以内)の利回りの変動を考慮して安全性の高い長期債券の利回りを基礎として決定することと規定されているのに対し、IASでは、貸借対照表日現在の優良固定利付社債の市場利回りを参照して決定することとされています。 |