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6 自己株式取引の税務 |
(1) 自己株の時価と税務上の取扱い 会社が株主から自己株式を取得、処分する場合の価格は、適正な時価であることが必要です。時価と相違する取引をした場合の課税上の取扱いをまとめると、次のとおりです。 高額譲渡の場合
低廉譲渡の場合
(2) 自己株式を取得、消却、処分した会社の課税関係 イ.平成18年3月31日までの考え方 平成18年3月31日までは、法人が自己株式を取得した場合には、購入手数料を含めて資産として計上していました。その取得に伴う交付金銭等がその法人の自己株式取得の直前の資本等の金額を超える場合には、その超える部分の金額について、自己株式を譲渡した株主にみなし配当が生じることになっており、自己株式を取得した株式発行法人は、その超える部分の金額を利益積立金から減算していました。 また、自己株式の取得は、資産としての自己株式の取得と一部利益積立金の払戻しの混合処理が採用されており、自己株式の税務上の簿価は計上されていました。 ロ.平成18年4月1日以降の考え方 法人税法上の有価証券の定義から自己株式が除かれました。そのため、法人が自己株式を取得した場合には、税務上の資産に計上せず、その取得のときに、資本金等の額、利益積立金額を減少させることになります。 なお、平成18年4月1日現在、自己株式を所有している会社は、自己株式の税務上の簿価は、資本金等と相殺され、ゼロとなる措置が講じられています。 (3) 取得事由ごとの処理 従来は、相対取引の場合と市場買付及び公開買付の場合に区分して、次のように処理されていました。
平成18年4月1日以降は取得事由ごとに、次のように区分されました。
つまり、上表の(1)から(8)までの事由による取得では、資本金等を減額し、それ以外の場合には、資本金等と利益積立金を合わせて減額することになります。 (4) 自己株式処分の税務 従来は、自己株式の処分に伴う処分差益および処分差損は、資本積立金の増加および減少として処理していました。
平成18年4月1日より、(2)ロ.で記述のように、税務上の自己株式を取得した場合の税務上の簿価がゼロとなったため、自己株式の処分は、通常の増資と同様の取扱いとなりました。したがって、自己株式の処分は、資本等取引として取り扱われ、課税所得は発生しないことになります。
(5) 自己株式の消却 平成18年3月31日までは、法人が取得・保有している自己株式を消却した場合には、消却する自己株式の帳簿価額から、減少させる資本の金額を減算した残額を、資本積立金の額から控除して処理していました。
会社が自己株式を消却した場合には、自己株式の税務上の簿価はゼロであり、かつ、対価を伴う取引でないため、税務上の処理はありません。
(6) 株主の譲渡益課税とみなし配当 従来は、資本等の金額と交付金銭等の金額の差額がみなし配当として処理されていましたが、平成18年4月1日より、次のように変更されています。
みなし配当の考え方を図解すると次のようになります。 |