目次 第3章


第3章 法人税

9.交際費等 3-9

(1) 交際費の意義及び範囲

 交際費等とは「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定義されています。

 ただし、以下に掲げるような費用については、交際費から除外するものとして例示されています。

 [1]  もっぱら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用(福利厚生費)

 [2]  飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く)であって、その支出する金額を参加人数で割った金額が5,000円以下である費用

 [3]  カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用(広告宣伝費)

 [4]  会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用(会議費)

 [5]  新聞、雑誌当の出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用(取材費)

 交際費等に関して、その支出の相手方は事業関連者とされているため、例えば、上記[3]のような費用で不特定多数を相手とするようなものは交際費には該当しませんが、法人の従業員等も事業関連者であるため交際費支出の相手方に含まれます。


(2) 交際費の損金算入限度額

 法人税法上交際費については、損金算入できる金額に限度額が設定されています。そのため費用についてはできるだけ交際費とならない方が税額的に有利になります。ただし、交際費に該当することが明らかな費用について交際費としなかった場合に税務調査等で交際費に認定されてしまうと、その金額について延滞税や過少申告加算税も合わせて納付することになりますので、交際費の範囲についてある程度の知識が必要となります。


(3) 隣接経費との区分

 交際費については、税法上損金に算入できる金額に限度があるため交際費となるかどうかによって税負担に多大な影響を及ぼすため、交際費かまたは他の費用となるかの区分は重要となります。しかし、交際費と隣接経費との区分は往々にして曖昧であり隣接経費との区分は以下のように考えられています。

 [1]  寄附金との区分

 税法上の寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が金銭その他の資産または経済的な利益の贈与または無償の供与をした場合における当該金銭の額もしくは金銭以外の資産のその贈与のときにおける価額または当該経済的な利益のその供与のときにおける価額によることとされています。

 一般に寄附金とは相手方からの反対給付なしに金銭などを贈与することをいい、そして、その金銭等の出損は直接事業に関係がないものに限られるということができます。

 しかし、交際費等も金品の供与による直接的な反対給付がないことなど共通した側面を持っているためその区分は困難です。そこで交際費と寄附金の区分について、租税特別措置法において事業に直接関係のない者に対して金銭でした贈与は原則として寄附金に該当するとされ、社会事業団体、政治団体に対する拠出金、神社の祭礼等の寄贈金などは交際費等に含まれないとされています。

 [2]  給与及び福利厚生費との区分

 交際費等と給与及び福利厚生費等の費用は、支出の相手先・支出形態、さらに相手方に満足を与えるというその効果の点で、いずれも共通するものであるためこれらの区分は困難となります。特に、旅行・飲食等による従業員らに対する経済的利益の供与については、それがいずれの費用であるかの認定にあたっての基準があるとは言い難いため、事実認定に困難を伴うことがあります。

 交際費等を定義する租税特別措置法第61条の4第3項では、「交際費等とは、交際費、・・・その他の費用で、法人が、・・・事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの(専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用その他政令で定める費用を除く。)をいう。」と定義されています。この規定から明らかなように、その本文の分離解釈において、従業員に対する慰安のための支出は交際費等に該当することは明らかであり、そのかっこ書で従業員に対する慰安のために行われる行事に通常要する費用を福利厚生費とするために交際費等の範囲から除いています。

 従って、交際費とこれらの費用の区分については、その形態よりも通常の範囲を超えるかどうかという程度に判断基準の重点が置かれることになるでしょう。

 [3]  会議費等との区分

 得意先との饗応・接待等の交際費と会議のための飲食費用等の会議費との区分について平成17年度までは具体的な基準がなく、実務上、会議の行われた場所・金額等(3,000円が目安とされていた)で個々に判断するとされていましたが、平成18年度の税制改正で飲食に係る交際費については、1人当たり5,000円以下である場合交際費としないことが明確化されました。従って、5,000円の金額の飲食費については、場所等を問わず会議費等として全額損金算入することができます。ただし、日時、支払い先、会議の内容等を明示する資料を保管しておくことが必要です。


10.寄附金 3-10

 寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞い金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産または経済的な利益の贈与または無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く)をした場合における当該金銭の額もしくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額または当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。


(1) 税法上の寄附金の区分

 寄附金についての税務上の取扱いは、交際費と同様に一定金額までの損金算入が認められ、超過額については損金不算入となり課税されます。

 寄附金については税法上、以下の4つに区分され、寄附金の損金不算入額の計算上取扱いが異なります。

 A 一般寄附金(B〜D以外の寄附金)
 B 国または地方公共団体に対する寄附金
 C 指定寄附金
 D 公益の増進に著しく寄与する法人等に対する寄附金


(2) 寄附金の損金算入限度額

 [1]  医療法人社団

  1)  一般寄附金限度額

  事業年度の
所得金額
損金経理
の寄附金
×2.5%+ 資本金
の額
資本積立
金の額
× 事業年度の月数 × 2.5 ×
12 1000

  2)  公益の増進に著しく寄与する法人等に対する寄附金の額

 1)の一般寄附金限度額か公益の増進に著しく寄与する法人等に対する寄附金の額の、いずれか低い金額

  3)  指定寄附金の額及び国または地方公共団体に対する寄附金の額

 損金算入限度額=(1)+(2)+(3)

 [2]  医療法人財団及び特定・特別医療法人

  1)  一般寄附金限度額

 (事業年度の所得金額+損金経理の寄附金)×2.5%

  2)  公益の増進に著しく寄与する法人等に対する寄附金の額

 1)の一般寄附金限度額か公益の増進に著しく寄与する法人等に対する寄附金の額の、いずれか低い金額

  3)  指定寄附金の額及び国または地方公共団体に対する寄附金の額

 損金算入限度額=(1)+(2)+(3)

 

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