目次 I-3-1


§3 日本型コーポレートガバナンス

 1  日本型コーポレートガバナンスの強化は、監査役制度の強化を中心に行われてきた。
 2  平成14年5月の旧商法改正により、委員会等設置型を選択すると監査役制度が不要となり、米国型のコーポレートガバナンスが選択可能となった。
 3  平成18年5月から施行された会社法では、自由な機関設計が可能となった。


1 旧商法改正におけるコーポレートガバナンス

 ここで、日本における旧商法改正においてコーポレートガバナンスがどのように強化されてきたかをまとめてみました。平成13年までの旧商法改正においては、一環して監査役制度の改正を中心に実施されてきました。改正の経緯と内容をまとめると以下のとおりです。

改正法 背  景 内  容
昭和49年改正
山陽特殊鋼等の倒産に代表される粉飾決算の多発と企業監査の重要性が指摘されたこと
オイルショック時の買占め、売り惜しみに対する企業の社会的責任が指摘されたこと
監査役の監査対象として会計監査に業務監査を加えた。
監査役の権限と独立性強化(任期2年、兼任禁止に子会社の取締役、使用人も追加、選任解任への意見陳述権)
大会社について、会計監査人に会計監査を義務づけた
昭和56年改正
ロッキード事件、ダグラス・グラマン事件など会社の不正経理に対する会社の自主的監視機能の強化
取締役会の決定事項の明示
取締役の代表取締役の職務執行に対する監督権限を明確化
大会社においては、複数監査役制度(2名以上)と常勤監査役制度を導入
平成5年改正
金融、証券不祥事事件、佐川急便事件等の企業不祥事の発生
株主権の強化(株主代表訴訟の訴額を定額化)
監査役の任期を2年から3年に伸張
大会社においては、監査役を3人以上、社外監査役を1人以上、監査役会制度の導入
平成13年改正
株主代表訴訟の増加、大和銀行事件第1審判決
取締役、監査役の賠償責任の軽減
監査役の権限、独立性強化(任期を3年から4年に延長、取締役会への出席義務、意見陳述義務を規定)
監査役の辞任については、株主総会での意見陳述権の付与
大会社においては、従来は1人以上だった社外監査役を半数以上とし、社外監査役の要件も厳格化
大会社では、監査役選任議案についての監査役会の同意権、監査役会に監査役選任議題、議案の請求権の付与

 平成14年5月の商法改正により、監査役制度とは別個の新たなガバナンス形態である委員会等設置会社が認められ、米国型のコーポレートガバナンスが選択可能となりました。

 

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