目次 II-2-6


2 IAS第37号

6 日本会計基準との較量

 わが国の引当金会計の基準は、企業会計原則注解・注18である。その第1段落は次のように定めている。

 「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする」。

 注18の背後にあるのは、明らかに収益費用アプローチの思潮である。すなわち注18は、期間損益計算の適正化の観点から、将来の費用であってもその発生原因が当期に存しているものにつき、これを当期の収益に対応させるべく、当期の費用として計上することを要求している。借方が費用であることが要諦であって、貸方は負債の場合もあれば資産の場合もある。わが国の引当金問題は取りも直さず費用問題である。この点が、引当金問題を資産負債アプローチから負債問題と捉えるIAS第37号との大きな相違である。また、ここでは引当金の定義規定と認識規準とが渾然一体と(よく言えば有機的に)叙述されている。

 続いて注18の第2・第3段落は、引当金を例示列挙し、偶発債務に言及する。

 「製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。

 発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない」。

 ここでは、収益費用アプローチから、評価性引当金である貸倒引当金が例示されている点も、IAS第37号との違いである。

 今後、日本基準とIAS(現行では国際財務報告基準[IFRS])との収斂(Convergence)または採用(Adoption)の議論が引当金会計に及ぶとき、論点となるのは、修繕引当金、特別修繕引当金といった、いわゆる「法的債務性なき引当金」であろう。IAS第37号は、すでに見たとおり、後に回避・撤回できるような将来的拘束に負債性を認めていない。日本基準が、収益費用アプローチと資産負債アプローチの折衷になお制度会計上の利点を見出すならば、修繕引当金、特別修繕引当金は残ることになる。

 

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