目次 II-2-4


2 IAS第37号

4 測定方法

 引当金として認識される金額は、貸借対照表日において現在の義務を清算するに必要な支出の最善の見積額をもって、これを測定しなければならない(第36項)。これが引当金の測定方法の基本原則である。しかしながら、引当金は「時期または金額において不確実な負債」であるがゆえに、実際の測定に際しては、「金額に係る不確実性」と「時期に係る貨幣価値」という厄介な問題が付随してくる。未使用の顧客ポイントやマイレージの使用割合をどのように測定するのか。遠い将来の資産除去債務をどのように見積もるのか。ここは実務家の知恵が問われるところである。

 本基準は、「金額に係る不確実性」に関して、状況に応じた最善の見積方法をいくつか提案している。基本原理は期待値の計算である(第39項)。すなわち、当該引当金に係る将来の「資源流出額」を、想定される将来事象ごとに推算する。次に各将来事象の生起確率を、事業体の過去の実績データ、先行きの趨勢予測、専門家の助言等にもとづいて決定する。そしてこの生起確率をウェイトにして「資源流出額」の加重平均値を求めるのである。

 たとえば、製品保証引当金(販売後1年間の無償修繕保証)の場合、当期中に販売した商品1単位につき、もし重大な故障(将来事象1)が生じれば4,000円の修繕費、軽微の故障(将来事象2)が生じれば1,000円の修繕費が発生すると仮定する。過去のクレーム実績をもとに、重大な故障の生起確率が100単位中5単位、軽微な故障の生起確率が100単位中20単位と判定されるならば、商品1単位当たりの修繕費の期待値は400円(=4,000円×5%+1,000円×20%+0円×75%)となる。その結果、貸借対照表日現在の製品保証引当金は、400円に当期中の販売総数を乗じることで測定される。

 「時期に係る貨幣価値」に関しては、本基準は次のように現在価値法の採用を義務付けている。「貨幣の時間価値の影響が重要な場合には、引当金の金額は当該義務を清算するに必要と予測される支出額の現在価値でなければならない」(第45項)。

 それでは、期待値の背後に潜む予想値のバラツキはどのように扱うべきであろうか。先の製品保証引当金の計算例で、重大な故障の修繕費が8,000円で生起確率が100単位中5単位、軽微な故障はなしと前提条件を変更しても、商品1単位当たりの修繕費の期待値は400円(=8,000円×5%+0円×95%)と先例と同額である。けれども期待値400円の背後に潜む予想値のバラツキは本例では明らかに大きくなっている。この予想値のバラツキこそ、ファイナンス理論で言うところのリスクに他ならない。本基準は次のとおりリスクに言及している。

 「多くの事象や状況に不可避的に付随するリスクや不確実性は、引当金に関して最善の見積を実現するにあたり、これを考慮に入れなければならない」(第42項)。

 「(現在価値法の)割引率は、貨幣の時間価値に対する現在の市場の評価と、当該負債に固有のリスクとを反映するところの、税引前数値でなければならない。リスクがすでに将来キャッシュフローの見積で調整されているならば、これを割引率に反映させてはならない」(第47項)。

 引当金の金額を最善の見積りをもって測定するためには、リスクを将来キャッシュフローか割引率かのいずれかに反映させなければならない。が、本基準はこれ以上その具体的手法には踏み込んでいない。この点は後に本基準の改訂公開草案を考察する折に、併せて試論してみたい。

 

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