このページはインラインフレーム対応のブラウザでご覧下さい。
II-2-1、2
2 IAS第37号
1 趣旨と範囲
IASにおける現行の引当金会計の基準は、1998年9月に原初公表された、IAS第37号「引当金、偶発負債および偶発資産」(以下、本基準)である。本基準では、表題のとおり、引当金・偶発負債・偶発資産の3科目について、これらの認識規準、測定方法、開示情報の定めが置かれている。
すぐ後に確認するとおり、本基準における引当金問題とは取りも直さず負債問題である。すなわち、第1章で述べた資産負債アプローチが引当金会計のルールづくりの基調とされている。私たちにとって馴染みの深い収益費用アプローチ(期間損益計算の適正化の観点から、将来の費用を先取りすべく相手勘定に引当金を計上する)が採られているわけではない点はきわめて重要である。
実際、本基準は仕訳上の借方問題には関与しない旨を明記している(第8項)。ために、引当金繰入額が資産計上されるか費用処理されるかは、別途の考慮を要することになる。このあたりの論点は、ポイント引当金、資産除去債務、修繕引当金の借方問題として吟味されるところである。また、資産負債アプローチであることのさらなる傍証として、本基準は、金融商品や未履行契約(当事者の一方に負担が生じる場合を除く)と併せて、評価性引当金も対象外としている(第7項)。
2 定 義
まず用語の定義を確認しておきたい。本基準では、引当金は「時期または金額において不確実な負債」と定義されている(第10項)。この単純な定義から、引当金問題は負債の認識と測定の問題であることが確認できる。またこの定義から、時期・金額とも確実性の高い営業債務や未払費用は引当金とは区別される(第11項)。
次は負債の定義である。負債とは「過去の事象から生起する事業体の現在の義務であって、経済的効益を具現化するような資源が事業体から流出することでその清算が果されると期待されるもの」をいう(第10項)。そして、この負債の定義こそIASC概念フレームワークの負債の概念をそのまま要約したものである。
けだしこれがIASの会計基準の組み立て方である。基礎に概念フレームワーク(=定義問題)があり、その上に財務諸表の構成要素が敷設され(=認識問題)、その上に個別の勘定科目が定量化される(=測定問題)。それはひとつの演繹的な体系を構築している。
さらに本基準は、偶発負債を次のとおりに定義する。
「(1)
過去の事象から生起する可能性としての義務であり、事業体の支配が完全には及ばない一つ以上の不確実な将来事象の発生または不発生によってのみ、当該義務の存在が確認されるもの、あるいは、
(2)
過去の事象から生起する現在の義務でありながら、次の理由で義務として認識されないもの
イ.
経済的効益を具現化するような資源の流出が当該義務を清算するに必要となるであろうことが確かではない。または、
ロ.
当該義務の金額を十分な信頼性をもって測定することができない」(第10項)。
それでは、引当金と偶発負債との境界はどこにあるのだろうか。ともに「不確実な義務」であることに相違はない。本基準は両者の境界を後述する認識規準に絡めて確定する。すなわち、負債として認識すべきものが引当金となり、負債として認識してはならないものが偶発負債となるのである(第12・13項)。