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【事例3−1】

 税務調査において、長期割賦販売を行った商品につき、翌期に支払期限が到来する賦払金で、それ以前の期に支払いを受けた代金250万円(消費税20万円)が、売上計上洩れとなっている事実を指摘されました。この金額に対応する原価は180万円(消費税別)で、期末棚卸高に計上されています。

申告調整

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)
 売上計上洩れ
2,700,0002,700,000

(減 算)
 売上原価認容
1,800,0001,800,000
未払消費税200,000200,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金2,700,0002,700,000
商   品Δ 1,800,000Δ 1,800,000
未払消費税Δ 200,000Δ 200,000

 会計上、賦払金の支払いを受けた期には、期末の棚卸しに関して次の仕訳を行なっています。

(借)商   品1,800,000(貸)仕   入1,800,000

 法人税法上、長期割賦販売に対して「延払基準」を適用する際は、その期に支払期限の到来する賦払金だけでなく、支払期限が翌期以降に到来するものであっても、その期に支払いを受けた賦払金は、その期に売上計上することとされています(法令124②かっこ書)。

 そこで、税務上は次の仕訳が要求されます。

 〈調整仕訳〉

(借)売 掛 金2,700,000(貸)売   上2,500,000
仮受消費税
(未払消費税)
200,000
仕   入
(売上原価)
1,800,000商   品1,800,000

 この調整仕訳に基づいて、売上高250万円を加算し、売上原価180万円を減算することになります。いずれもその代金相当額について、まだ資金の流出入はないので、別表5(1)において、それぞれプラスとマイナスの利益積立金を計上します。また、売上げの追加計上により消費税20万円の納税義務が生じるので、これもマイナスの利益積立金として別表5(1)に計上することになります。

 上掲の別表4では、別表5(1)の利益積立金額との関連性を考えて、売上高に関する加減算に関し加算を税込み金額(270万円)で行い、消費税相当額(20万円)を減算する両建て方式で調整しています。

  • 仕入高にかかる消費税は、仕入時に計上し消費税計算に織り込み済みですから、上記の調整仕訳に仕入高の消費税は関係しません。
【事例3−2】

 税務調査の指摘事項について、会計上は賦払金の支払期限が到来した期に、次の仕訳を行っています。

(借)売 掛 金2,700,000(貸)売   上2,500,000
仮受消費税200,000
(借)仕   入
(売上原価)
1,800,000(貸)商   品1,800,000

申告調整

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)
 売上原価否認
1,800,0001,800,000
消費税納付200,000200,000

(減 算)
売上計上洩れ認容
2,700,0002,700,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金2,700,0002,700,0000
商   品Δ 1,800,000Δ 1,800,0000
未払消費税Δ 200,000Δ 200,0000

 会計上も売上高と売上原価を計上することにより、税務と会計の食い違いは解消しました。そこで、修正申告で計上した加算と減算をそれぞれ取り消すと同時に、プラス・マイナスで計上されている利益積立金も消滅させます。

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