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4.損金

(1) 債務確定主義

 法人税法第22条第3項では、損益計算上の費用項目が損金になると定められています。ただし税務特有の考え方として、同項第2号のカッコ書きに注意する必要があります。

 『二  前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費 以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額』

 損金であるためには債務の確定を要する(「債務確定主義」)という内容ですが、減価償却費は計算上の数字で債務確定ということがあり得ないので、これだけは例外とされています。


 費用につき債務が確定しているかどうかは、次の3つの要件に照らして判断します(基通2−2−12)。

 (1)  期末までにその費用に対する債務が成立していること
 (2)  期末までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
 (3)  期末までに金額を合理的に算定できること


 決算で計上する未払費用が損金として認められるかどうかは、常にこの3つの要件に照らして判断します。たとえば、未払給料に関してこの債務確定の問題を考えれば次のようになります。


(2) 未払給料の取扱い

 給料を毎月20日締切りで25日に支給する3月決算の会社があるとして、3月21日から末日までの11日間の給料を、当期の損金として未払計上できるどうかを検討します。

 まず、法律上の債務が成立しているかどうかです。仮にもし従業員が4月1日に退職するとしても、この11日分の給料は支払わなければなりません。給料支払日が4月25日だから、この日に在職していないので支払わないというわけにはいかないでしょう。11日間会社に対して労力を提供したことによって、これに対する見返りとしての給料の支払義務が、3月31日現在で会社には存在しているということです。

 次に、第2の要件として、給付の原因となる事実が発生していることが求められています。ここで給料支払の原因となる事実とは、会社に対する労力の提供で、11日分についてはすでに発生しています。

 最後に、未払給料の金額を合理的に算定できるかどうかですが、これは11日分の給料を各人ごとに計算すればまったく問題ありません。しかし、そこまで厳密な計算をしなくても、4月25日に支給する給料の総額に基づき日割り計算で求めても十分に合理的です。また、場合によっては決算作業の迅速化のため前月(3月)の支給金額に基づいた計算でも、人員に大幅な変動があるといった特殊な要因がなければ認められるでしょう。

判例・裁決例

(1)  土地の低額買入れに対して受贈益を認定した事例
 原告会社が代表者から買い受けた土地の譲受価額は、その土地の時価より低額であったとして、その譲受価額と時価との差額を原告会社の受贈益と認定した課税処分は相当である(宇都宮地裁平4.2.12判決)。

(2)  無償による役務提供によって収益が発生するとした事例
 不動産賃貸業を営む会社が貸室を無償で使用させている場合、賃料・管理料相当額の収益と同額の寄付金を計上すべきである(東京高裁昭60.6.26判決)。

(3)  贈与資産の時価を転売価額で評価した事例
 贈与を受けた資産を贈与と同時に他に転売している場合に、特段の立証がなければ、転売価額をもって贈与資産の時価と評価するのは相当である(横浜地裁平3.6.10判決)。

(4)  親会社に支出した負担金を寄付金と認定した事例
 子会社が親会社に対して、親会社の欠損金を解消させるために支出した負担金は、法人税法上の寄付金に該当する(最高裁昭63.3.1第三小法廷)。

(5)  関連会社に対する売上値引きを寄付金と認定した事例
 原告会社の関連会社に対する売上値引きは、業績が悪化していた関連会社を援助するために行われた、原告会社による利益の無償供与の性質を有するものであり、法人税法上の寄付金に該当する(東京地裁平3.11.7判決)。

 

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