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第2章 租税条約のあらまし |
1 租税条約とは |
非居住者等の国内源泉所得の取扱いについては、国内法より租税条約が優先適用されるということですが、この租税条約の目的やその効力を説明してください。 租税条約は、そのタイトルが示すとおり、主として国際的な二重課税の回避又は排除を目的とするとともに、脱税の防止なども図られていますが、近年においては、租税面からの投資促進等を図るための改正も行われています。 1 租税条約の目的 各国はその主権に基づく固有の課税権を有しているため、タックス・ヘイブンにある相手先との国際取引を除いて、通常の国際取引に対して、我が国と相手国とで二重に課税するケースが生じることがあります。国境を越えて国際間の経済関係が極めて緊密な現状では、国際的な二重課税が生じると、それが円滑な国際商取引を妨げるだけでなく、国際間における投融資、技術移転、人的交流などの広範な分野における障害になりかねません。 そこで、主として国際的な二重課税の回避又は排除を目的として、各国との間で租税条約が締結されています。この租税条約の正式な名称は、通常、「所得(及び譲渡収益)に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府と○○○○○(国名又は政府)との間の条約(又は協定)」となっており、二国間における所得に対する租税について、課税の範囲等が定められています。 このほか、租税条約には締結国間の課税権の配分、国際的な脱税及び条約の濫用による租税回避の防止、税務当局間の国際協力・情報交換といった目的などがあります。 また、近年においては、租税条約にはクロス・ボーダーの取引を租税面から後押しして、対内・対外投資や経済交流の促進を図ろうとする経済活性化策の側面があることが指摘されています。
なお、もちろん取引先の属する相手国と租税条約が締結されていない場合は、国内法がそのまま適用されることとなります。 2 租税条約の効力 租税条約は、国内法に優先して適用されますので、国内法の規定と異なる場合は、条約の定めるところにより、課税が軽減又は免除される場合があります。 また、所得の源泉地に関しても、国内法と異なる場合は条約の定めに従い、国内源泉所得の範囲を判定することとなります(門野久雄著『非居住者・外国法人 源泉徴収の実務Q&A』第2章問5参照)。
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