目次 Q10


Question 10
 所有権移転外リースとは
 会計上の所有権移転外リースとは、どのようなリースをいうのですか。リース取引とともに説明してください。

Answer


 リース会計基準では、リース取引を「特定の物件の所有者たる貸手が、当該物件の借手に対し、合意された期間(リース期間)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(リース料)を貸手に支払う取引」と定義(その趣旨は民法上の賃貸借契約と同じ)し、「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2種類に分類しています。

(1)  ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担するリース取引をいいます。

(2)  オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。

 ファイナンスリースは、「所有権移転ファイナンスリース」と「所有権移転外ファイナンスリース」に分類されます。

<所有権移転ファイナンス・リース取引>
(1) リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権が借手に移転するリース取引(所有権移転リース)
(2) リース期間終了後又はリース期間の中途で、名目的価額又は市場価額に比して著しく有利な価額でリース物件を買取る権利が借手に付され、その行使が確実に予想されるリース取引(割安購入選択権付リース)
(3) リース物件が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作されたものであるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース取引(特別仕様物件のリース)

<所有権移転外ファイナンス・リース取引>
(1) 解約不能リース期間中のリース料総額の現在価値が、借手がリース物件を現金で購入すると仮定した場合の合理的な見積金額(見積現金購入価額)のおおむね90%以上であるリース取引
(2) 解約不能リース期間がリース物件の経済的耐用年数のおおむね75%以上であるリース取引

※ 上記の判定結果が90%を大きく下回ることが明かな場合は除きます。



(注1)  所有権移転外ファイナンス・リースは、金融取引だけでなく、賃貸借取引の性格も併せ持った混合的取引とみることができるため、リース会計基準の改正前は、原則として売買処理を適用しますが、財務諸表への注記等を条件として賃貸借処理が認められていました。

(注2)  オペレーティング・リース取引は法人税法に規定する「リース取引」に該当しないため、従来どおり賃貸借処理となります(法法64の2マル数字3)。


【リース会計基準の概要(ファイナンス・リース)】
所有権移転ファイナンス・リース 所有権移転外ファイナンス・リース
(判定基準)
 解約不能で、かつ、次の(1)〜(3)のいずれかに該当する場合
 (1) 所有権移転条項付
 (2) 割安購入選択権付
 (3) 特別仕様物件
(判定基準)
 以下の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合
 (1)  解約不能リース期間中のリース料総額の現在価値が見積現金購入価額のおおむね90%以上(現在価値基準)
 (2)  解約不能リース期間が経済耐用年数のおおむね75%以上(経済的耐用年数基準)
(会計処理)
 売買処理(強制)
(会計処理)
 賃貸借処理又は売買処理(選択)
 

 (新会計基準)

  売買取引に準じた処理


 新しいリース取引に関する会計基準(企業会計基準委員会)では、上記「所有権移転外ファイナンス・リース」については、原則「売買に準じた処理」を求め、例外として、中小企業、少額・短期のリースについては、「賃貸借処理」を認めています。具体的には、「賃貸借処理が認められる少額リース資産・短期のリース取引」とは、次の(1)から(3)のいずれかを満たす場合です(リース取引に関する会計基準の適用指針35項)。

(1)  重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引

(2) リース期間が1年以内のリース取引

(3)  企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引


■ 参考「リース取引に関する会計基準」(2007.3.30)について
 企業会計基準委員会(ASBJ)は、2007年3月30日に「リース取引に関する会計基準」を公表しました。同基準では、所有権移転外ファイナンス・リースについて賃貸借処理を廃止し、売買処理に一本化することとされています。すなわち、「ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う」(基準9)と規定しています。
 所有権移転外ファイナンス・リース取引の借手は、割賦払いによりリース物件を取得する場合に準じた会計処理を行うこととなるために、リース物件とこれに係る債務を同額で貸借対照表に計上することになります。
 また、基準では、リース資産及びリース債務の計上額を計算するに当たっては、リース契約締結時に合意されたリース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によって、当該利息相当額については、原則として、リース期間にわたり利息法により配分することになっています(基準11)。
 所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定するとしています(基準12)。
 なお、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース物件の取得とは異なりリース物件を使用できる期間がリース期間に限定されることなりますから、償却期間はリース期間とし、残存価額は原則としてゼロとすることになります。


(適用時期)
 本会計基準は、平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用されますが、平成19年4月1日以後開始する事業年度からでも適用することができます。

 

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