(5) 特別償却の経理処理

 特別償却の経理処理方法には、次の3通りがあります。
 
(a) 通常方式 常の減価償却と同じように処理する方法
(借)減価償却費   ×××   (貸)機     械   ×××
あるいは
(借)減価償却費   ×××   (貸)減価償却累計額   ×××
(b) 準備金方式
(措法52の3)
通常の減価償却計算から切り離して特別償却を処理する方法
(借)減価償却費   ×××   (貸)特別償却準備金   ×××
(c) 利益処分方式
(措法52の3)
償却費を損益計算上の費用に計上しない方法
(借)未処分利益   ×××   (貸)特別償却準備金   ×××
 
 特別償却による償却額は、正規の減価償却手続によって費用配分されるものではなく、租税政策上の優遇措置として損金算入される項目ですから、損益計算の観点からは費用性が認められません。

 したがって、特別償却を損益計算書に費用として計上する上記の(a)と(b)の経理処理には、企業会計上、疑問が残ります。貸借対照表に計上する数字に関しても、(a)の処理によれば、固定資産の残高が「相当の償却」を行った後の評価額といえるのかどうか(商法32(2))、また、(b)の処理で計上される「特別償却準備金」の科目に果たして負債性があると考えられるのか(商法287ノ2)という点で、いずれも商法上の疑義が残ります。

 企業会計上は、特別償却は損益計算とは関係なく利益処分により行うのが正しいと考えられており、貸方科目の特別償却準備金は、資本の部に「任意積立金」の一種として計上するのが妥当です。

 税務上も企業会計の考え方を尊重し、利益処分により特別償却を行った場合でも、償却限度に達するまでの金額は損金に算入することとしています(措法52の3)。

 実務的には、中小企業では特別償却も通常の定額法または定率法による償却と同じように、上記の通常方式((a))で処理しているケースが多いようです。ただし、法定監査の対象となる規模の会社になると、そのような商法上疑義のある経理処理は認められないため、必ず利益処分方式((3))によっています。
 利益処分方式で経理する場合には、特別償却の金額が損金経理されませんから、申告書の別表4で減算することになります。
 通常方式で特別償却を行った場合には、償却可能限度額(通常は取得価額の95%)がその分減少します。たとえば、「中小企業者等の機械等の特別償却」を実施すれば初年度に取得価額の30%が損金算入されますから、定額法また定率法による普通償却の総額は95%−30%=65%になります。

 つまりこれは、特別償却を行った場合には将来における普通償却の実施可能範囲が狭まることを意味しており、特別償却が「課税の繰延べ」措置であるといわれるゆえんです。あくまで合計の償却可能限度額は取得価額の95%どまりで、償却の実施時期を繰り上げることによって今支払うべき税金を先送りするのが特別償却の制度である、という点にご留意ください。
 

 (6) 特別償却準備金の取崩し

 準備金方式または利益処分方式で経理した場合には、通常の減価償却計算とは別枠で特別償却をしますから、耐用期間全体の普通償却額だけで取得価額の95%相当額が費用化されます。

 ところが、この場合も税務上は上述の特別償却の本質(課税の繰延べ)に変わりはありませんから、初年度に損金算入された特別償却の金額が、翌期から7年間で均等額ずつ益金に算入されることになっています(措法52の3(4))。したがって企業会計上、初年度に設定した特別償却準備金を翌期から取り崩さなければなりません。

 なお、特別償却準備金の取崩し計算は、設定した事業年度別の準備金ごとに区分して行います。

 【算式】
特別償却準備金のうち損金算入された金額× 当期の月数 =益金算入額
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計 算 例

冷房機に特別償却の適用がないとされた事例

 中小企業者が取得した冷房機につき、通常機械と呼ばれるものであっても建物と一体となって建物の効用価値を高めるものは、税務上は建物付属設備にあたるとされ、この冷房機については租税特別措置法第45条の2(中小企業者の機械等の特別償却)の規定の適用はない(最高裁昭63.3.3第一小法廷判決)。

 

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