6 資本的支出と修繕費

 (1) 両者の相違点

 固定資産の修理や改良などを行った場合、2通りの経理処理が考えられます。たとえば、手持ちの機械を手直ししたときの仕訳は次のとおりです。

  (1) (借)機   械   ×××   (貸)現金預金   ×××
  (2) (借)修 繕 費   ×××   (貸)現金預金   ×××

 これは手直し費用の支出を、「資本的支出」((1)の処理)と「収益的支出」((2)の処理)のいずれと認識するかの違いですが、企業会計上は、支出した全額が当期の費用となるか、いったん資産に計上して以後耐用期間にわたり徐々に費用化されるかの違いとなってあらわれます。

 資本的支出と収益的支出のいずれであるかは、その支出により固定資産の価値が増加しまたは耐用年数が延長するか、あるいは、そのような事実はなく単なる維持修繕にとどまるかで判断します。税務では、いずれの処理を行うかが課税所得の計算に影響を及ぼすため、この判断基準に関して詳細な取扱いを設けています。


 (2) 資本的支出とされるもの

 税務上の扱いでは、資本的支出とは、修理、改良などその名義のいかんを問わず、固定資産について支出する金額のうち次の金額をいいます(令132)。

 次のいずれにも該当するときは、いずれか多い金額です。

  区  分 資本的支出の金額
(1) 使用可能期間(耐用年数)が延長されると認められる場合
(2) 価額が増加すると認められる場合

 固定資産の価値を高め、または耐久性を増すこととなる支出が資本的支出ですが、具体的には、たとえば次のようなものが該当します(基通7−8−1)。

資本的支出の例示 建物の避難階段の取付けなど物理的に付加した部分の費用
用途変更のための模様替えなど改造または改装に直接要した費用
機械の部品をとくに品質や性能の高いものに取り替えた場合の取替費用のうち、通常の取替えに要する費用を超える部分の金額
 建物の増築、構築物の拡張や延長などは資本的支出ではなく、建物や構築物そのものの取得と考えられます。


 (3) 修繕費とされるもの

 一方、収益的支出とは、固定資産の修理、改良などのために支出した金額のうち、その固定資産の通常の維持管理費用、あるいは災害等に対する原状回復費用などをいいます。具体的に次のような金額は、「修繕費」として全額を損金に算入することが認められています(基通7−8−2)。






建物の移築に要した費用
 解体移築については旧資材を70%以上使用し、移築後の建物が移築前のものと同一の規模および構造のものである場合に限られます。
機械装置の移設に要した費用
 集中生産などによる移設の場合は、機械装置の効用が増すと認められます。そこで運賃、据付費などの移設費(解体費を除きます)は機械装置の取得価額に算入し、帳簿価額に含まれる旧据付費が損金に算入されます。ただし、移設費が移設直前の帳簿価額の10%以下なら、旧据付費をそのままにして移設費を当期の損金に算入することもできます(基通7−3−12)。
地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用
地盤沈下により海水などに侵害されるのを防止するための建物・機械装置などの床上げ、地上げ、移設に要した費用
現に使用している土地の水はけを良くするなどのために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用および砂利道または砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用


 (4) 形式基準による判定

 記のように、通達で資本的支出と修繕費の具体例が示されていますが、これらはあくまで例示にすぎず、現実には判断に迷うケースが多々あります。そこで実務的には、通常、次の形式基準で判定します。

  (a) 少額または周期の短い費用の損金算入(基通7−8−3)
 一つの修理や改良のために支出した費用が、次のいずれかに該当すれば修繕費として損金経理することができます。
 b 支出額が20万円未満の場合
 b おおむね3年以内の周期で修理や改良が行われている場合

  (b) 形式基準による修繕費の判定(基通7−8−4)
 資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額で次のいずれかに該当するものは、修繕費として損金経理することができます。
 b 支出額が60万円未満の場合
 b 支出額が修理・改良をした固定資産の前期末の取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
  (注) 10%基準は、「原始取得価額+前期末までに支出した資本的支出の額」で判定し、帳簿価額(未償却残高)は関係ありません。

  (c) 資本的支出と修繕費の区分の特例(基通7−8−5)
 資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない場合には、継続適用を条件として、次のいずれか少ない金額を修繕費として損金経理することができます。
 b 支出額の30%相当額
 b その固定資産の前期末取得価額の10%相当額

  (d) 災害などの場合の特例(基通7−8−6)
 災害などで損傷した固定資産に対する支出額で、資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものは、支出額の30%相当額を修繕費として損金経理することができます。

 (b)〜(d)の基準は、資本的支出であることが明らかな金額には適用されません。

 

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