目次 Q4


 II.有能外国人を定着させる


Question
 年齢・業務・学歴による定着率の違い
 人材の定着率には年齢による差はあるのでしょうか。

Answer

 一般に「35歳、マネジャー職」など、一定の年齢、職位に達すると定着率が高くなる傾向はあるようです。その背景には、35歳を過ぎると転職先が少なくなること、給与も一定水準にまで達すること、マネジャー職まで到達したということで、わざわざ苦労して到達した地位を手放すのは惜しいという気持ちが働くことなどがあるようです。

 
1. 年齢と定着率

(1)一般論:年齢が高くなると定着率は高くなる傾向

 年齢と定着率の関係について日系企業の経営者にお話を伺ったところ、国にかかわらず、「転職をするのは30代前半までであり、40代で転職というのは、ヘッドハント以外ではありえない」というのが共通の見解でした。

 その理由としては、「35歳を過ぎると求人が減るため、転職活動自体が難しくなる」「管理職は誰でもなれるわけではないし、そこまでたどり着いたという安心感もあり、苦労して得た地位をわざわざ手放すことは少ない。また仮に転職しても、転職先で現在と同じ地位が得られるとは限らないことから、転職に対して保守的になっている傾向がある」ことがあげられます。また、某企業の責任者からは「当社をはじめ、日系企業は現金ベースの給与は欧米系には劣るが、フリンジ(医療制度、退職金制度など、部長クラスは個人用の車貸与)面をいれると、欧米系より良い面もたくさんある。そういうことがわかりだすのが30代くらいということもあり、30歳を超えると定着率がよくなるのかもしれない」という意見もありました。

 この「年齢が高くなると定着率は高くなる傾向」に関しては、人材紹介会社からも同様の意見が出ていますので、この傾向は基本的には正しいといえるでしょう。


(2)「本当に優秀な人材であれば年齢とともに転職リスクは上がる」という意見も

 その一方で、「本当に優秀な人材であれば、経験を重ねることで、マネジメントの能力も身につけ、年齢を重ねるごとに人材としての価値も上がるため、転職リスクも上がる。当社は定着率が非常に高いが、35歳以上、管理職の社員が転職し、欧米系企業において非常に高いポストに就いたケースが数例ある。よって、35歳以上で管理職の社員の定着率が高いということは、その会社の居心地がよほど良いのか、もしくは外部労働市場ではそれほど価値のない人材が管理職になっている証拠では」という厳しい意見を持つ現地経営者も存在しました。


(3)定着率の高さは本当に望ましいことか

 離職率が高すぎるのも問題ですが、一定の年齢以上の社員の定着率が高すぎるのも、人件費の面から考えるとそれほど望ましいこととはいえないかもしれません。もちろん、報酬に見合った労働の対価を提供してくれている間はよいですが、必ずしもそうではない場合、「一つのポストでの滞在期間は○年以内、それを超えたら平社員になるか、転出するか」といった選択肢を迫ることも考慮しないと、年齢の高い社員が重要なポストをすべて占領してしまい、本当に優秀な若い社員の昇進の機会を奪うことにもつながりかねません。

 ただし、このような一定年数を経過しても昇進しなければ役職からおろす、もしくは転出というシステムは、欧米系企業ではある意味当たり前でも、日系企業ではあまりなじみがありません。よって、このようないわゆる「UP or OUT」のシステムを取り入れるのであれば、採用段階でその旨を伝えておくほうがトラブルは少ないでしょう。


2. 業務内容と定着率
  〜経理・財務、人事・総務など汎用性のある部門の定着率は一般に低い〜

 業務内容でみた定着率については、一様に「技術部門など、会社固有の要素のある部門に勤める者は比較的定着するが、経理・財務、人事・総務など、汎用性のある部門の人間は定着率がきわめて低い」という意見があがりました。

 そのため、「経理・財務、人事・総務については2〜3年で転職することを前提として業務を組み立てることで、転職されることによるダメージを少しでも小さくなるように自衛している」という声も聞かれます。

 一方、業務内容をすべてマニュアルに落とし込み、細分化することで、「一社員の業務範囲をきわめて狭くすることで、他社での応用性が低くなり、結果として転職しにくい状況を作り出している。また、仮に転職されても、業務はすべてマニュアル化されているため、新規採用した社員に当該マニュアルどおりに業務を行わせる形を行っているため、人材が抜けてもそれほど痛手は生じない」という企業もありました。


3. 学歴と定着率

 学歴と定着率に関しては、一概にはいえませんが、高学歴であればあるほど、プライドも高く、途上国においては日本以上に学歴社会であることからも、高い学歴があればその分転職活動も有利に働き定着率が低くなる傾向はあるようです。

 よって、「一流大学の学生を採用するよりは、日本でいうところの専門学校、高専クラスを採用して、しっかり教えていくほうが、定着率は高いように思う。これからは、大卒などにこだわらず、採用の幅を広げ、その中で見込みがありそうな人材を育てていくほうが結果的には会社にとってプラスになる。当社は日本では有名企業の部類に入るが、当地においてはそうではないため、エリートといわれる種類の学生の採用はそもそも難しい」という声も聞かれます。

 

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