目次 Q2


Question
 現地幹部人材のキャリア形成について
 「Q1」を読んで、現地人材の採用の方式についてはわかりましたが、採用した後、どのような形で育成していくのが一般的でしょうか。
 現地幹部人材のキャリア形成の道筋について教えてください。

Answer

 大きくわけて6パターンあり、それぞれ一長一短あります。

 
1. キャリア形成の道筋
  〜大きく分けて6パターン〜

 「海外ビジネスを成功させるため、将来的には現地人材に現地法人の中心的な役割を担ってもらいたい」─これは海外展開をする企業の共通の願いといえます。

 しかし、どうすれば、自社現地法人を背負ってくれるような人材を育てることができるのか、各社とも試行錯誤の段階であり、また、これについてはたった一つの正解、というものはありません。

 幹部人材を育成するにあたっては、図表2のとおり、いくつかパターンが考えられます。Q1と重複する点もありますが、それぞれの特徴やメリット、デメリットは以下のとおりです。


図表2 現地法人の幹部人材となるまでのキャリア形成の道筋
図表2 現地法人の幹部人材となるまでのキャリア形成の道筋

 
事例 I : 日本にいる人材を本社採用し、一定期間経過後に現地勤務させるケース
 
 このケースで一番多いのは、日本に留学している新卒学生を、他の日本人学生と同様に新卒採用し、日本人社員とまったく同じ研修や業務を経験した後、現地に赴任させるというパターンです。大企業などではこのケースで入社しているケースが多くみられ、また日本人とまったく同じ採用試験をくぐり抜けているだけに、日本語も非常に堪能かつ、相当有能な人材が採用できているようです。また、日本本社での勤務経験があることから、本社での人間関係も形成されており、日本本社にとっては、非常に信頼できる人材として重用され、現地法人の中心的な人物として活躍しているケースもみられます。

 この場合、処遇は日本人駐在員と同等とするのが一般的ですが、中には「同じ国籍でありながら、現地人材と給与格差が大きすぎるとよくない」という理由で、赴任した途端に給与を現地レベルに引き下げるケースもあります。しかし、このケースの場合、すぐに転職されるか、モチベーションが大幅に低下し、思ったような成果をあげてくれないかのどちらかになります。

 ただし、駐在員は「一時的な外国での滞在でいろいろと不便が多いから」という前提で様々な手当や補償がされているわけですから、形式的には赴任とはいえ、実際には半永久的に母国に戻る社員について、いつまで「駐在員」としての待遇を与えるかというのは難しいところです。これについては、本社の海外駐在員規程の中に、規程の対象者や対象期間などを明示し、納得させておく必要があります。

 
事例 II : 日本にいる人材を現地法人の人材として採用するケース
   
 このケースで多いのは、日本にいる外国人を、日本国内で開催する外国人ジョブフェア等を通じて採用したり、人材紹介会社や知人の紹介で、現地法人用の人材として採用するというパターンです。

 日本にいる人材ということで、日本語が堪能で、かつ、日本ビジネスや文化にある程度理解があるケースも多くなります。

 日本側で採用活動をするため、現地で採用するよりも、自社の認知度も高く、相対的に有利な状況で採用できます。また、本社人事部が大きく関与するため、様々な角度から候補者を判断することができます。ただし、当該人材の採用にあたっては、本社だけで勝手に決めてしまうのではなく、現地のトップ(日本人駐在員であることが多いでしょうが)との相性が大切ですので、必ずその判断を仰ぐ必要があるでしょう。

 
事例 III : 日本にいる人材を現地法人採用したあと、日本勤務経験をさせ、現地に戻すケース
 
 事例 II と基本的には同じですが、違う点は、事例 II は現地で採用して、その後はずっと現地勤務であるのに対し、事例 III は、現地採用後、当該人材が優秀で将来の幹部候補であると判断すれば、日本本社に1年程度赴任させ、グループの経営理念や日本式ビジネスを学ばせるといった点です。

 日本への一定期間の研修を兼ねた赴任では、自社ビジネス手法を学ばせるだけでなく、当該期間中に日本人社員との間で人間関係も形成でき、会社に対するロイヤリティの植えつけにも役立ちます。

 ただ、研修を終え、現地に戻った際に、日本勤務で培った能力が生かせるようなポジションや権限および処遇を与えないと、あっさりと転職されてしまうケースもあるので注意が必要です。

 
事例 IV : 現地にいる人材を日本本社採用し、一定期間経過後現地に赴任させるケース
 
 事例としては非常に少ないといえますが、中国の大学を卒業した理工系エンジニアを日本本社で採用するケースは最近時々みられます。優秀な人材であれば日本でも海外でもどこからでも採用したい、という意図で行われる場合が多く、採用当初から、「将来的には現地法人の基幹人材に」と考えて採用しているわけではないようです。

 
事例 V : 現地人材を現地採用し、そのまま現地で勤務させるケース
 
 日本企業が現地法人を採用する手法として、もっとも多いパターンといえます。日本への赴任が無理であっても、自社グループ全体に対するロイヤリティ向上のためにも、1〜2週間程度の日本での研修や定期的な出張などを取り入れることをおすすめします。

 
事例 VI : 現地人材を現地採用したあと、幹部候補生は一時的に日本に赴任
 
 基本的には事例 III と同じです。違う点は事例 III が日本の労働市場にいる人材を採用しているのに対し、事例 VI では、現地にいる人材を採用しているという点です。現地にいる人材を採用するという点で、給与水準などは事例 III より低く抑えられる可能性が高くなります。

 

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