目次 Q1


 I.有能外国人を現地で採用する


Question
 有能人材採用手段についての考え方
 今般、当社では海外に現地法人を設立しました。現在は日本からの赴任者が中心となり活動していますが、将来的には、現地法人は現地国籍の人材にマネジメントを任せたいと考えています。
 現地人材の採用手段としては、どのようなものがありますか。

Answer

 現地人材の採用手段を考えるにあたっては、「どの労働市場で採用するか?」「どんな人材(新卒? 中途?)を採用するか?」「日本本社採用か? 現地採用か?」「現地での勤務方式は(赴任者か? 現地社員扱いか?)」など、様々な側面で考える必要があります。

 
1. 有能外国人材採用にあたっての考え方

 日本企業は他国の企業に比べて、ナショナルスタッフの活用が非常に遅れているといわれています。

 もちろん、日本人駐在員が現地法人のトップとして活躍し、その業績を大きく伸ばしている企業も存在しますが、現地のマーケットを対象としたビジネス兼現地に根差したビジネスを行うにあたっては、そこの文化や商習慣等に精通している現地の人材にトップとして活躍してもらうのが一番といえます。

 では、現地人材の採用方法としてはどのような手段があるのでしょうか。有能人材の採用手段を考えるにあたっては、(1)どこの労働市場にいる人材を採用するか、(2)どの法人で採用するか、(3)新卒を採用するのか、経験者を採用するのか、という3つの切り口があります。以下では、その3つの切り口のメリット・デメリットを紹介します。

 
2. どこの労働市場にいる人材を採用するのか?
  〜日本の労働市場から探すのか? 現地労働市場から採用するのか?〜

(1)日本の労働市場に存在する人材を採用する場合

 日本の労働市場にいる人材とは、日本で勤務したり留学している人材のことを指します。

 メリット→日本への理解、自社の認知度が相対的に高い

 日本の労働市場にいる人材であれば、すでに日本に在住していることもあり、「日本語が堪能」「日本文化を比較的理解している」「アルバイトも含め、日本での職業体験がある場合、日本のビジネスの進め方をある程度理解している」などがあげられます。

 また、海外進出して間もない企業の場合、たとえ日本では大手企業であっても現地ではほとんど無名、というケースもあります。このような場合、現地での採用活動は困難を極め、自社が採用したいと考えているような人材からなかなか応募が来ない、ということも考えられます。よって、自社のネームバリューがより認知されている日本で採用活動をしたほうが、現地で採用するより、優秀な人材が確保しやすいという側面もあります。
 
 デメリット→現地労働市場にいる人材よりもコスト高になるのは確実

 彼らは日本の労働市場にいるわけですから、仮に最初から現地法人勤務になる場合であっても、待遇も日本人とほぼ同様、少なくとも現地採用の人材よりははるかに高い水準の給与レベルを求めてくるケースがほとんどです。

 よって、日本の労働市場にいる人材を、「現地レベルで安く雇用する」というのは、よほど有名な企業で、その企業で経験を積むことがキャリアアップや将来価値の向上につながる、という場合以外は難しいといえます。また、デメリットというほどではありませんが、日本にいる人材の場合、「将来的には日本で永住の在留資格を取得したい」というケースもあります。永住の在留資格を取得するにあたっては一定期間の日本での勤務経験が必要ですが、仮に本社からの赴任という形で海外に勤務した場合、その間は日本での勤務経験にカウントされない可能性があります。また、すでに永住権を持っている人も、日本を出国する場合には「再入国許可」を取得する必要があります。再入国許可は、取得してから3年間有効ですが、期限内にいったん日本に戻らないと、せっかく取った永住権を失効してしまうことになります。


(2)現地の労働市場に存在する人材を採用する場合

 現地の労働市場に存在する人材を採用する場合のメリット・デメリットは、上記(1)の逆と考えてよいでしょう。

 つまり、現地労働市場にいる人材を採用する場合、その人材を日本で雇用しない限りは現地水準での給与で雇用できますから、圧倒的にコストは低くなります。

 一方、現地にいる人材にとって、日本企業は一部の大手企業を除いては、その存在自体がほとんど知られていませんから、優秀な人材を確保するのに相対的に苦労するといえます。よって、自力での採用活動は難しい場合も多く、人材紹介会社等、他者の手を借りて行う必要があるなど、日本で採用する場合に比べて「自分の土壌に引っ張り込んで採用活動をすることができない」という点がデメリットといえます。


3. どの法人で採用するのか?
  〜日本本社採用か? 現地法人採用か?〜

(1)日本本社で採用とする場合

 メリット→ロイヤリティを根付かせやすく、うまくいけば非常に貴重な存在に

 日本本社採用とし、日本人社員と同じ経験を積ませることで、自社の企業理念や仕事の仕方などを教育することができます。また、日本本社で勤務することで他の日本人社員との人間関係の形成もできるため、将来的に現地に勤務する場合であっても、日本本社との調整などがスムーズに行えるという点があります。

 また、本社採用の場合、採用にあたっては、本社の人事部も当然関与するので、日本本社の意向に沿った人材が確保できるといえます。
 
 デメリット→コストが高い、現地採用の従業員との軋轢の原因にも

 日本本社の正社員として雇用するわけですから、現地に赴任させた場合も、日本人駐在員と同等の待遇を与える必要があります。自国に戻ったら自国の現地水準並みの給与にしてしまう、という企業もありますが、筆者がこれまで聞いた例では、この方式でうまくいっているケースはほとんどなく、赴任したとたんに退職し、ライバル会社に転職するか、社内で不満をため込み、思ったようなパフォーマンスをあげてくれないというケースがほとんどです。中には、本社採用時に、「将来、現地に戻れば現地水準並みの給与にする」ということを約束して採用するケースもありますが、それがいざ現実になると、結局は納得できない、というのが本音のところではないでしょうか。また、折衷案として、日本人駐在員よりは給与は低いが、現地社員よりは高い、という水準を取る企業も存在しますが、この場合も、給与格差に見合った能力差がない限りは、現地採用の人材が反発することにもつながりますし、本人からしても、日本人駐在員との給与格差が能力格差に見合っていないと、士気の低下にもつながることになります。

 現地法人の日本人トップの中には、「本社採用の現地人が来ると、現地採用の現地人との処遇格差から、現地での職場の雰囲気が悪くなることがあるので、本社採用の現地人には赴任してもらいたくない」とおっしゃる方もいます。よって、本社採用の現地人を現地に派遣させる場合は、その人が「能力的に非常に優秀で、かつ日本人駐在員と同じマインドで働いてくれる」という要素がない限り、難しいといえます。

 また、本社採用にあたっては、当該外国人のビザの申請や変更など、様々な点で会社がサポートする必要も出てきます。

 また、本人が永住の在留資格を取りたかったり、すでに永住の資格を持っている場合は、現地での勤務期間に考慮する必要があります。


(2)現地法人で採用する場合

 最近、日本への留学生を現地法人で採用するという動きも広がっています。グローバル企業の中には、自社グループが一堂に会して、「(留学生の)母国での就職フェア」を開催し、現地法人の人材確保を日本で行っているケースもあります。

 しかし、そういった大規模な就職フェアに参加できない企業の場合は、人材紹介会社や外国人雇用サービスセンターなどが主催するジョブフェアなどで、現地法人で勤務する人材を確保するのもひとつの方法です。また、現地で採用の場合、当初から現地法人での雇用契約となるため、現地水準の処遇設定が可能です。


4. 新卒を採用? 中途社員を採用?

(1)新卒を採用

 メリット

 「何も色がついていない若手人材は非常に育てやすい」というのは、企業の人事担当者および現地法人担当者が口を揃えていう言葉です。また、現地法人責任者の中からは、「中途採用より新卒採用のほうが定着率は高い」という声もよく聞かれます。
 
 デメリット

 新卒人材は、当然ながら即戦力としては期待できないため、長期間かけて育てる必要があります。よって、現地法人を設立して、人材育成にコストがかけられない企業にとって新卒採用は難しいといえます。

 また、せっかくコストと時間をかけて育て上げたところで、他社に引き抜かれてしまう、といった事態になることも少なくありません。

 特に中国では、日本企業が採用し教育した人材が、欧米系企業から高い処遇を提示されて転職していく、というケースが散見されます。よって、このような経験をした現地日本人駐在員からは、「せっかくコストをかけて教育しても、いとも簡単に転職してしまう」という嘆きの声がよく聞かれます。


(2)中途社員を採用

 メリット→即戦力として活用

 中途採用者のメリットとしては、「即戦力として期待できる」「一から教育しなくてもよい」があげられます。日本企業での経験があれば、日本的なビジネスの進め方にも理解があり、使いやすいといえます。
 
 デメリット→転職される可能性、自社の色に染めにくい

 一方、デメリットとしては、転職している人材というのは、再度転職されるリスクが高いということがあげられます。よって、これまでの職歴から判断し、あまりに短期間で転職を繰り返しているような人材や、キャリアに一貫性がない人材は避けたほうが無難です。また、中途採用者については、他社での経験を生かして活躍してくれる半面、自社の風土に染まりにくい、という点があげられます。


図表1 採用場所、人材種別で異なるメリット・デメリット
  新卒採用 中途採用




【メリット】
色がついていないので教育しやすい
日本人と同じ基準の採用過程を得ている人材は相当有能
【デメリット】
現地採用者より報酬が高くなる傾向
教育コストがかかる
【メリット】
教育コストが低い(即戦力)
日本での業務経験があれば、日本式のビジネスの進め方を理解している
【デメリット】
現地採用者より報酬が高くなる傾向
新卒ほどロイヤリティは高くないケースが多い




【メリット】
色がついていないので教育しやすい
日本採用者より報酬を低く抑えられる
【デメリット】
教育コストがかかる
【メリット】
教育コストが低い(即戦力)
日本企業での業務経験があれば、日本式のビジネスの進め方を理解している
【デメリット】
新卒ほどロイヤリティは高くないケースが多い

 

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