Q21 |
VII 債権償却の周辺問題 |
Q21 民事再生手続開始の申立てがあった債権について |
貸倒償却(ないし貸倒損失)が税務上損金算入できるか否かの判断は、当該債権が回収不能となったか否かを債務者の支払能力等の実情により判断します。ただし、民事再生法の規定による再生計画の認可の決定等により、法律上も債権が消滅してしまえば、たとえ債権者側の経理処理で損金経理していなくとも、消滅した債権の額については損金算入されます(法人税基本通達9−8−1)。 お尋ねの場合、昨年度の決算日の状況では、これらの要件に合致していないため、債権の全額について貸倒償却(ないし貸倒損失)を計上していても、計上時期が尚早であるため、その損金算入は認められないこととなりましょう。その場合、否認される金額が計上した一部の金額(貴社の考えでは3割)なのか、それとも全額なのかが問題となります。 貴社で考える3割の回収可能額については、民事再生法の規定に基づく再生手続の開始決定を受けた後に開催された債権者説明会において目安として知らされた金額に過ぎず、これをもって債権額の7割が法律上消滅したわけではありません。 したがって、債権者説明会における説明等に基づき、当該7割に相当する額の損金算入を主張することは困難であると思料されます。
債務者が民事再生法の規定による再生手続開始の申立てを行っていれば、債権額の100分の50に相当する金額について損金経理を行い、「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書」(別表十一(一))の記載があれば、損金算入することが認められます(法人税法第52条第1〜3項、法人税法施行令第96条第1項第3号ロ)。 貴社の場合、会計上「貸倒引当金計上額」ではなく「貸倒償却(ないし貸倒損失)」で処理していても、損金経理は行っていたのですが、残念ながら、「個別評価金銭債権に係るかしだ暦引当金の損金算入に関する明細書」の記載はなかった状況にあるといえましょう。 ここで、当該明細書の「記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認め」られれば、貴社の場合、債権額の100分の50に相当する金額について損金算入できるのですが(法人税法第52条第4項)、これは、次の二つに該当する場合には認められるとされています(法人税基本通達11−2−2)。 1)貸倒損失を計上したことに基因するものである 2)(当該)確定申告書の提出後に当該明細書が提出されたとき 貴社の場合、1つ目の事象には該当しているため、2つ目の条件さえ満たせば、このような取扱いを受けることができると考えられます。
貴社の場合、税務調査の結果を受けて、修正申告書を提出する際に「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書」(別表十一(一))を記載・添付すれば、債権額の100分の50に相当する金額までの損金算入は認められることとなりましょう。 |