目次 Q3


Q3 貸倒引当金処理について、一般事業会社と金融機関との差異を教えてください。

《ANSWER》

 企業会計上の貸倒引当金を算定する場合の具体的な処理方法については、「金融商品に係る会計基準」(以下、「金融商品会計基準」)および「金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)」(以下、「実務指針」)に示されている。

 金融商品会計基準(第四.一)では、債務者の財政状態および経営成績等に応じて、債権を以下のように区分し、その区分ごとに貸倒見積高の算定方法が示されている。

【債権区分】
(1)一般債権 経営状態に重大な問題がないと認められる債務者に対する債権
(2)貸倒懸念債権 経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか、または生じる可能性の高い債務者に対する債権
(3)破産更生債権等 経営破綻または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権

 一方銀行等金融機関は、保有する資産を個別に検討し、回収の危険性または価値の毀損の危険性に従って区分するという、いわゆる資産の自己査定を実施し、その自己査定結果に基づいて必要かつ適正な償却・引当てを実施している。なお金融機関における債権の区分は以下のとおりである。

【金融機関の債権区分】
●正常先 業況が良好であり、かつ財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者
●要注意先 金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞している履行状態に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者または財務内容に問題がある債務者等、今後の管理に注意を要する債務者
●破綻懸念先 現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状況にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)
●実質破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど、実質的に経営破綻に陥っている債務者
●破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、たとえば、破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者

 一般事業会社に対しては債権区分について簡便法も認められている。一般事業会社においては、すべての債務者について、業況の把握および財務内容に関する情報の入手を行うことは困難であることが多い。この場合、原則的な区分方法に代えて、たとえば、債権の計上月(売掛金等の場合)または弁済期限(貸付金等の場合)からの経過期間に応じて債権区分を行うなどの簡便な方法も認められる。

 また、一般事業会社の連結子会社ならびに持分法適用の子会社および関連会社については、まず当該会社が保有する債権を以下の分類に基づき区分して本報告に基づく貸倒見積高の算定をした上で、債務者の財務状況の把握と債務弁済能力の検討を行い、当該子会社または関連会社に対する債権の区分の判定を行う。

【一般事業会社と金融機関の債権評価】
一般企業における債権区分 金融機関における債権区分
区 分 見積方法 区 分 見積方法
一般債権 貸倒実績率等 正常先債権 貸倒実績率等
要注意債権
貸倒懸念債権 担保のない部分の必要額 破綻懸念先 担保のない部分の必要額
破産更生債権 割引現在価値 実質破綻先 担保のない部分の全額
破綻先

 

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