目次 Q2


Q2 貸倒引当金はどのような意味をもつのですか。

《ANSWER》

 企業を取り巻く環境は多様で、企業の取引から生じた売掛金等の金銭債権は、取引先の倒産等の理由から、必ずしも全額が回収されるとは限らない。その回収不能額を費用処理することを、企業会計上の貸倒処理という。

 企業会計原則(第一.六)によると、債権が回収できないおそれがあるときには、それに備える処理を実施しなければならないとの要請であると解される。商法上も商法典において「金銭債権につき取立て不能のおそれあるときには取立てること能わざる見込額を控除することを要す」として、債権の評価を要請している。このとき、直接減額する方法と、引当金として間接的に減額する方法の2通りの方法が考えられる。これは金融機関の不良債権処理で問題となった、直接償却と間接償却と同じである。

 貸倒処理には、対象債権を直接減額せずに貸倒引当金を設定し、対象債権の評価を示す方法と、対象債権を直接減額する貸倒損失処理の2つの方法がある。この違いは、直接減額すると債権のもともとの金額がわからなくなるが、貸倒引当金を設定した場合には、債権発生時の金額とそこから回収できない債権とで情報が2倍に増える分、有価証券報告書の読者にも詳細な情報が得られるという違いがあるだけである。企業会計上、2つの処理の間に実質的な違いはないといってよいだろう。

 まず、貸倒引当金を設定する方法について説明する。そもそも引当金とは、
(1)将来の特定の費用または損失に対するものであること
(2)その発生が当期以前の事象に起因していること
(3)将来の費用または損失の発生の可能性が高いこと
(4)その金額を合理的に見積もることができること

 以上4点が設定要件とされる。これらの要件をすべて満たす場合に、将来の特定の費用または損失のうち、当期に負担すべき金額を当期の費用または損失として引当金に繰り入れられる。

 貸倒引当金にこの4つの要件を当てはめて考えた場合、売掛金の発生や貸付取引という過去の事象に起因して、将来において貸金の未回収という事象が生じるので、(1)将来の費用と(2)当期以前の事象についてはそれを満たすことが明らかである。残りの(3)損失発生の可能性と(4)金額の合理的見積りについては検討が必要となろう。

 つまり、取引先が破綻したときに、担保からどのくらい回収し、一般の配当がどのくらいあるのかを予測することになる。

 

目次 次ページ