目次 Q4-1


第4章 相続対策と事業承継

 Q4−1 相続対策

がむしゃらにやってきたおかげで病院の経営も順調です。子供は2人いまして、長男は医師として病院を手伝ってくれています。長女は銀行員に嫁いでいます。相続対策で注意することがあれば教えてください。

Answer1 相続対策

 相続に際して一番大切なことは、相続人が被相続人の残した財産を有効に活用して有意義な生活を送ることができるよう、すべての相続人にとって公平かつ納得のいく相続となるよう、事前の準備を十分に行っておくことです。

 しかし現実には、財産の相続を巡って子供同士で争いが生じたり、ひどい場合には親族間で決定的な対立が生じる可能性もあります。

 相続対策に際しては、相続税の税金対策も大切ですが、その前に「誰がどの財産を相続するか」という遺産分割の問題があることに注意しなくてはなりません。


2 遺産分割の留意点

(1) 事業用資産は、事業を継ぐ人にまとめて相続させること

 医師であるご長男が病院を継がれる場合、病院の運営に必要な土地・建物、医療用設備などは、ご長男がまとめて相続されるべきと考えられます。

(2) 分割しにくい資産は共有にしないこと

 現在住んでおられる土地・建物は、できる限り相続人同士の共有とせず、相続人のどなたか1人がまとめて相続されるのが望ましいと考えられます。別荘地などは相続人の考え方も考慮しつつ、共有とするか単独相続とするかを考えればよいでしょう。

 仮に土地・建物を相続人同士の共有としても、そのうちの1人だけが居住している場合、不平がでてくることがあります。

 相続後、相続人が自分の意思だけで財産を使用したり、処分したりできるよう分割されることが重要です。

(3) 遺言書を作成しておくこと

 遺言書の作成はおすすめです。毎年の元旦や誕生日に見直して作り直されても、作成日付が最新の遺言書が有効となります。

 作成保管を弁護士に依頼することも可能ですし、信託銀行でも比較的安い費用で遺言書の作成から執行までを支援してくれますので、これらのサービスを活用されることもご検討されるとよいでしょう。

 なお、遺言書の作成には細かな要件等がありますので、ご注意ください。


3 相続税の納税猶予

(1) 非上場株式等に係る相続税の納税猶予

 後継者である相続人が、相続等により、一定の要件を満たして経済産業大臣の認定を受けた非上場株式を先代経営者から取得して会社経営を承継する場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、株式に係る相続税の80%相当の納税が猶予されます(免税ではありません。)。

 しかし、この相続税の納税猶予制度については、医療法人は適用することができません。

(2) 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予

 平成26年度税制改正により新たに設けられた納税猶予制度で、持分あり医療法人が厚生労働大臣の認可を受けて認定医療法人となった場合、相続税や贈与税の納税が一定期間猶予されるという優遇措置が与えられます。

 

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