グループ法人税制における譲渡損益調整資産
旭課長「黒田さん。今度、弊社で保有する不動産を関連会社に売却することになりそうなのですが、時価で売却しようとすると多額の譲渡益が発生してしまうのです。何かいい方法はありますかね?」
黒田「売却価格である時価はどのように算定したのですか?」
旭課長「不動産鑑定士に依頼して評価してもらいましたので問題ないと思います。」
黒田「関連会社も御社も株主は社長の親族で占められていますので、両社は完全支配関係であることからグループ法人税制が適用されますね。」
リエ「グループ法人税制ですか?」
黒田「はい。グループ法人税制とは平成22年度税制改正で導入された100%グループ内の内国法人間の取引に適用されるものです。法人間の寄付金の損金不算入や受贈益の益金不算入、受取配当金の益金不算入などがありますが、譲渡損益調整資産に該当する資産の譲渡が行われた場合には譲渡損益を繰り延べることになります。」
リエ「譲渡損益調整資産とはどのような資産をいうのですか?」
黒田「土地、固定資産、金銭債権、繰延資産、有価証券(譲渡法人または譲受法人にて売買目的有価証券とされる有価証券は除く)で譲渡直前の帳簿価額が1000万円以上の資産のことをいいます。」
旭課長「譲渡損益が繰り延べられるということは今回の譲渡益が課税されないのですか?」
黒田「譲渡した時点では課税されませんが、完全支配関係が消滅したときや譲受法人側で次のような事由が生じたときには戻入が生じます。」
・譲渡または除却したとき
・評価替えしたとき
・減価償却費の額を損金算入したとき
リエ「譲受法人で減価償却費を損金算入したら戻入されてしまうのですか?」
黒田「全額ではなく一部です。戻入金額の計算方法には原則法と簡便法があります。」
① 原則法
戻入額=譲渡損益額×譲受法人で損金算入した減価償却費/譲受法人での取得価額
② 簡便法
戻入額=譲渡損益額×譲渡法人の事業年度の月数/譲受法人が適用する耐用年数×12
リエ「原則法の場合は毎回、譲受法人で損金算入した減価償却費の金額を教えてもらわなくてはいけないので簡便法の方が楽ですね。」
黒田「はい。原則法の場合は譲受法人側に通知義務があります。簡便法を適用しようとする場合は、譲渡の日の属する事業年度の確定申告書に簡便法により計算した金額及びその計算に関する明細の記載ある場合に限り適用されます。」