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経営コーチコラム

  人間力を高めるためには


日本経営コーチ協会専務理事長
税理士・経営コーチ  榎本 恵一



 皆さんこんにちは。理事長の榎本でございます。

 今年3月11日の震災以降、いろいろな分野・・・仕事、考え方、生活全てに変化が出ています。その中で「経営コーチ」が何をするか、もっと言えば、今こそ経営コーチの時代になってきたのではないかと、私は考えているのです。

 今回の震災によって、この数年間は厳しい時代となるでしょう。原発問題も深刻です。しかし仕事を投げ出すことなく、仕事に邁進していく事が大切ですしクライアントが落ち込んでいれば、私達がどのように心の支えになれるのか。そうです、私達経営コーチが支えていかねばならないのです。

 今こそ、困っている方々に経営コーチの力を発揮できる時なのです。

 私達経営コーチは、日ごろからお客様の声を聞いていく訓練をしています。「マネジメント」「リーダーシップ」「コーチング」という3本柱の教育メニューを学習しているので、その力を発揮できる時だと私は考えております。

 会員向けに毎月ご提供しておりますラジオコンテンツの中で、私達協会のアドバイザーである藤原直哉先生は、政治に対する怒りを顕わにしていらっしゃいます。今、政治が全く機能していないカオス状態です。今もなお余震も治まらず、福島原発のメルトダウン・・・。ここから先、一体どうなるのか?なかなか気持ち的にも震災の収束感を感じる事ができない日々が続きます。

 このような時に、一体何が必要なのでしょうか?

 同じく協会のアドバイザーである松尾一也先生と、先日私は対談を致しました。「人間力」がテーマでした。「人間力」とは、何でしょうか?例えば「あの人は暖かい人だよね」などと人から称されるように、人間力は決して“着飾る”ことの出来ないものです。その人の中で、積み上がって成り立っていくものなのでしょう。何か鎧を着てしまっていては「あの人、人間力あるよね」とはならず、「何だかあの人、重たい感じの人だよね」となってしまうでしょう。逆に、フットワーク軽く、いろんな事を考え、人のために尽くそうと活動できる人が「人間力のある人」と称されるのではないでしょうか。

 3月11日の震災以降は、私達の考え方や行動、大きく言えば死生観を変えていくチャンスになったのだと私は思うのです。昨年末を振り返れば、伊達直人という名前でランドセルが配られるというニュースが話題になりました。“恥ずかしがり屋の日本人”の象徴のようなニュースでした。現在では震災以降、義援金やらボランティアやら各種応援ムードに包まれ、「私達の心は一つだ」という雰囲気が盛り上がってきました。今回の震災を境に、日本人も変わってきたのではないかと思うのです。

 目の前に起きている事に対して自分達が行動を取る・・・これにより人間力がどんどん磨かれていくのです。松尾先生も仰っていましたが、「一日一生」の思いで活動できるか、また「会計事務所の方々と会うと楽しい」とクライアントに言っていただくようになることが、会計事務所としての人間力ではないでしょうか?

 楠田丘(くすだ・きゅう)先生という方がいらっしゃいます。この方は第一回労働白書を書かれた方です。楠田先生は“生活”“家庭”“福祉”“社会”を「人材社会学」と称しました。現代ではここが弱くなり、核家族化、少子化、情報遮断などの様々な問題が生じました。その影響で生活スタイルも今後ますます変わっていくだろうと予測される状況の中で、会計事務所もこういった“生活”“家庭”“福祉”“社会”という数字以外の話も突っ込んで話をしても良いのではないでしょうか?クライアントにしてみても、その分野に関して「もっと話をしてもらいたい」という方も多いと思うのです。

 このような数字以外の話を、会計人が質問したり話題にしたりして人間力を発揮できるかが、本当にクライアントに受け入れられる事です。受け入れられれば、まさに私達経営コーチがモットーとする“日本経済の再生に寄与する”ということになるのではないでしょうか?


榎本 恵一 (えのもと けいいち)

税理士。榎本会計事務所 所長。株式会社イーシーセンター代表取締役。(社)日本経営コーチ協会理事長。

日夜顧問先である中小企業の支援に励み、特に財務や経営に関するコンサルティング・人事コンサルティングには定評がある。現場での経験をふまえたセミナー・講演、インターネットラジオや書籍などでの情報発信にも精力的に取り組んでいる。著書多数。

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