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経営コーチコラム

  税理士業務における今後の業務のあり方


日本経営コーチ協会理事
税理士・経営コーチ  鯨井 規功



 私達の業務は基本的に、“月次巡回監査業務”と“申告書の作成業務”から成り立っています。しかし月次巡回監査業務については、今のままですと「この先、無くなるかもしれない」と思うのです。何故無くなるのか?それは会計ソフトの進歩と、顧問先企業の経理部の方のスキルアップにあります。皆様の顧問先企業でも、自計化の割合は高いものになってきているのではないでしょうか?経理部の方々が会計ソフトの入力に慣れ、入力ミス等も無くなってくると、顧問先側からすれば、会計事務所による、数字や入力チェックだけの巡回監査の必要性は著しく低下していきます。

 では、なぜ私達は月次巡回監査を行っているのか改めて考えてみましょう。基本的には、申告書の作成業務を平準化させるために、毎月訪問する事にあるのではないでしょうか?年一の訪問先しかなく、一年分の会計資料を一度に処理しなければならない所ばかりだとしたら、毎月の業務の大変さを想像することは難しくないでしょう。逆に、訪問しない分、月次の顧問料は減収します。つまり、業務が大変になる一方で、年間顧問料としては減収してしまうのです。このように申告書の作成業務を平準化させること自体は、税理士側の目的であり、お客様にとってのメリット、月次巡回監査の必要性を感じて頂けなくなります。

 では、月次に訪問するにはどうしたら良いのか。それは、「経営に軸足を置いた月次巡回監査」なのです。経営において必要になるのは、適正な現状把握と改善項目の洗い出し、そして改善計画の作成と実際の改善行動、それに対する結果の検証です。よくいうPDCAサイクルですね。つまり月次巡回監査は、経営上「無くてはならないものである」という認識を経営者に持っていただく事が大切なのです。私共も、そのような視点の中で経営者に接することが大切になってくるのです。そこが、これからの税理士業務のあり方になってくるのではないでしょうか。そのために必要なのは、経営のアドバイザー、相談役として私共が存在できるかどうか。そういったスタンスを具現化するために、経営コーチの育成が必要とされるのです。経営者の頭の中にある漠然とした“会社の理念”、“目標”などを言葉として、数字として具現化するお手伝いをする。それを達成するための経営計画・事業計画の作成を手伝い、進捗状況を確認し、達成できた・出来なかった理由を検証し、それを踏まえて次月以降の計画を修正するアドバイスをする。これが、月次に訪問する際のポイントとなってくると思います。ただし、全ての関与先に経営コーチのニーズがあるわけでもありません。低料金を求めるお客様もいらっしゃいます。低料金でも対応できる“作業としての税理士業務”なのか、高付加価値商品として利益率の高い“経営コーチ業務”なのかを考えて、関与先のニーズにあわせて私共の事務所では取り組んでいます。

 リーマンショック以降のデフレ、不況の今だからこそ、私達の業務のあり方を見直していく必要があるのではないでしょうか?


鯨井 規功 (くじらい のりゆき)

昭和39年生まれ。専修大学大学院商学研究科卒。
平成5年、(有)鯨井会計入社。
平成7年、税理士登録。(有)鯨井会計つくば事務所設立。代表取締役就任。
現在、税理士法人 鯨井会計 代表社員

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