Dr.鈴木丈織の連載コラム ベネフィットドクター(R)スキルアップマインド
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経営参謀に欠かせないマインド・スキル・センスの構築
「お客様企業のやる気と信頼の職場づくり」への
アドバイス・スキル(3)


3.やる気をつぶさない指示命令の方法

 組織の中で自分の仕事に誇りを持ち、仕事にとって自分の必要性や重要性が感じられ、自分の価値を認識したとき、人は満足感を得ることができます。仕事を通してこのような「やり甲斐」「やったぞ」という気持ちを感じることができれば、仕事の面白さ、楽しさを感じ、さらに上(自己実現の達成)を目指す意欲を育てることができます。大プロジェクトの一員であれ、日常業務であれ、自分の価値を認識できれば仕事の大切さを理解し、さらに意欲的な心を育てることができます。

(1)人が「やり甲斐」を感じるとき

1) 与えられた仕事・役割や課題が自己評価よりやや高いものであるとき
2) 仕事・役割や課題を遂行するとき、さまざまな工夫や努力が必要なとき
3) 役割の中である程度自由裁量の余地を与えられるとき
4) 情報が十分に伝えられる環境があるとき
5) 周囲の社員が自分の仕事を重要なものと認めているとき
6) 達成すれば何かの外的報酬、内的報酬(賞賛)を惜しまない環境があるとき
7) 仕事を通じて自分たちが社会に貢献する活動をしている自覚と誇りが持てるとき
8) 社会貢献度について客観的に自己測定、自己評価、自己認識ができるとき
9) 上司や先輩から公平な評価を受けられる状況にあるとき

(2)やる気をつぶさない指示命令の方法

 次の5つは、特に若手社員に指示命令するときの注意事項です。やる気をつぶさず、意欲的な心を維持できるような雰囲気づくりのための具体的な方法です。

1)仕事の位置を認識させる

 実際に行う仕事内容だけを指示するのではなく、その仕事がどのように前工程、次工程とかかわり、自分はその中でどんな立場であるのかということを同時に説明します。それによって、全体像を把握させ、会社の仕事としての貢献度がイメージできるようにします。

2)作業と仕事の違いを認識させる

 仕事は、上司の指示命令に従うことが基本です。しかし、それは指示されたことだけを、ただ言われた通りにやることではないことを教えなければなりません。指示通りにする場合でも、いかにすればもっとも効率的か、次工程の相手にわかりやすいか、よりよい方法はないのか、とさまざまに気働きすることが必要です。これが、目先の「作業」と全体や効果を考えながら行う「仕事」の違いです。これをしっかりと認識させ、「仕事」が求められているのであって、「作業」を求めていないことを理解させます。そうすれば、いかに単純なルーティンワーク(定型的な日常業務)であっても誇りを持つ意識が変わり、「仕事」として携わる行動が変わります。よく言われる、「小さい仕事ができない人に、大きい仕事はできない」ということです。

3) 仕事を一人で抱え込むことと責任感とは違うことを認識させる

 与えられた仕事に対する責任感は重要です。責任を全うするためには、求められている成果をはっきり認識する必要があります。

 まず、指示をどのように理解したかを復唱させ、確認します。報告によってその成果を確認します。また、指示が分からないときは質問させる、途中で行き詰ったら確認に来させる等、自分一人で仕事を抱え込んでしまわないように注意します。分からないのに一人で考えていても時間の無駄です。すぐに適切なアドバイスを自分から求めることが責任感のある積極的な仕事のやり方であることを理解させます。

4)仕事はすべてチームワークであることを認識させる

 3)と同時に仕事はすべてチームでやっていることを理解させなければなりません。質問したりアドバイスを求めることは恥ずかしいことではなく、むしろ必要なことであることを理解させます。仕事が行き詰ったときには上司、先輩、同僚、周囲のすべての人がお互いに支えあっていることを伝えます。

5)よりよい仕事をしようという意識を持たせる

 仕事はやればよいのではなく、いかにやるか、すなわち、よりよい仕事をしようという気持ちでやることが大切です。そのためには、仕事の目的と効果を常に意識させることが必要です。その意識があれば、自分が何をすべきか、押さえるべきポイントが分かり、自分なりの工夫ができます。