
| 第8話 |
| M&Aによる事業承継(2) |
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| 右: |
株式会社クレメンティアM&Aサービス長倉社長 |
| 左: |
同社社員、伊原さん |
今回は、実際にご自身の会社を「M&Aによる売却」というかたちで事業承継した、株式会社クレメンティアM&Aサービスの長倉社長の体験談をご紹介いたします。
現在では、長倉社長はご自身の経験を活かし、M&Aの仲介会社を運営されています。
(前回からのつづき)
―M&Aによってハッピーリタイアを上手にむかえるポイントは?―
【M&Aへの取り組みの前段階として】
会社の株式をまとめておいてもらいたいですね。株式が分散してしまっていると、売却交渉に支障をきたしてしまいます。M&Aへと動き出す前に、現代表者が他の株主から株式を買い取るなどしておいてください。
財務などでは、公私の切り分けも大切です。また、業務面での人材をしっかり育てておき、社長がいなくなっても会社運営に問題が起こらないようにしておくことも必要です。
【交渉時について】
社長は個性が強く、自分の実績をアピールしてしまうことがありますが、これは交渉においてマイナスになります。M&Aでは、現在の社長がいなくなっても会社は回るという体制ができていなければ、買ってもらえません。買い手から誤解を受けないためにも、醸し出されそうになる「会社の大黒柱」というオーラを、社長はできるだけ抑えるように意識していただきたいところです。
あとは、金額ももちろん重要ですが、会社の風土を尊重してくれる相手かどうかも見極めたいところです。私事で恐縮ですが、自身の経験では相手の人柄を重視したおかげで、売却が終わっても元の従業員とのよい関係が継続しています。
【売却成立後】
従業員や銀行への開示は、契約がすべて決まってからがいいでしょう。売却したら後は知らないという態度でなく、その後のサポートを宣言してあげることで従業員たちの動揺をおさえられます。
―社員への事業承継は考えなかったのですか?―
難しいと思いました。株式の買取りをするほど資金的な余裕がある人はいないし、仮に融資を受けて買い取ろうとしても、金融機関の個人保証を引き継ぐことは難しかったのではないでしょうか。
業務上の役割としても、すべてを背負って立てる人間はいませんでした。
社員とお金の話はしづらいし、社員が後継者となるならば、銀行は旧社長の実質的な経営権をみなして個人保証を外さないだろうと思います。
―もし社内に子供がいたとしても、外部にM&Aをしましたか?―
子供がいても多分売却していたんじゃないかと思います。
会社が相当大きくなって支えてくれる人間も周囲にいて、経営の難度はそんなに高くないという状況であれば子供に継がせることも考えたでしょう。しかし、中小企業で、かつこれからの経営環境を考えると、よほど社長業に長けていないと難しいと思うのです。
実際弊社のクライアントでも、息子が社内にいながらも、会社の売却を相談に来る人は多いものです。
経営能力の承継は難しいもので、下手をすると個人保証の押し付けになってしまいます。
―事業承継やM&Aを考えている社長に何かアドバイスはありますか?―
今の弊社のクライアントにはご高齢の社長が多いのですが、そうなると体力も時間も余裕がなくなってしまいます。やはり早めに相談に来ていただきたいところです。数年前ならばすぐに売れたのに、環境の変化とともに時期を逃してしまった…なんてケースもよくあります。
もうひとつは、自分で判断しないでまずは話を聞いてもらいたいということです。
「自分の会社や自分の業界では、買い手なんてつくわけない」と、はなからあきらめてしまっている人が多い気がしますが、もったいないですね。世の中には会社を買いたいという人も多いものです。
価格の面では車や土地のように相場が分かりやすいものではないので、自社の価値を分かっている人は少ないものです。自社の価値を知っておいて損はありません。
―最後に、ご自身として会社をM&Aしてよかったと思われますか?―
個人保証もなくなり精神的な安堵感を得ることができました。経営者時代は常にプレッシャーを感じている気がしましたが、おかげさまで自分の時間も作れるようになりました。
私の場合はリタイアではなかったのですが、それでも自分の人生を仕切り直して、次のビジネスへの展開をむかえられて本当によかったと感じています。
《インタビューを終えて…》
長倉社長が売却した会社の従業員規模は20人、2社合わせても約40人です。一般的な認識では、M&Aは大企業のものと考えられている傾向があるように思いますが、決して大きな会社しか売れないわけではありません。長倉社長の経験はそれを裏付けてくれるものです。
中小企業経営者の皆さんには、ひとつの経営者のゴールとしてM&Aにもどんどんチャレンジしてもらいたいところです。そのようなゴールのイメージがあるかないかで、会社経営の仕方も変わるでしょう。もちろん、「買ってもらえる会社」を目指すことが、結果的によい会社作りにつながると思います。
会社の売却に動いた社長さんからは、「なかなか買い手が見つからない」や「着手金が無駄になった」という話を何度か聞いたことがあります。普通のモノの売買ではないため確かに難しい面はありますが、やはり初期段階で誰に相談するかが大切なのだと思うところです。長倉社長の会社のように、着手金なしというのもユーザー側からするとありがたいですよね。
早めに相談するべきだというご意見は、私も同感です。一番良いタイミングで売却を決断できないで、業績が低迷しはじめてから売りたいと言い出す社長さんも多いものですが、そんなに都合よくいくものではありません。また、早い段階からM&Aを試みれば、十分な準備もできるし、可能性も広がります。
もう一点、経営者の高齢化による経営能力の陰りにも注意してもらいたいところです。社長さんとしてはまだまだやれると感じていても、やはり高齢化により判断ミスなどが増えたり、スピード感が鈍ってしまっているケースは見受けられるものです。業績が悪化してしまってからではM&Aによるハッピーリタイアは難しくなってしまうので、早めに動いてタイミングを逃さないようにしていただきたいと願います。
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