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インターネットを活用した新たな自計化推進モデル

急激に増えている「自計化」を推進する会計事務所

 現在、税理士業界を取り巻く環境は大変厳しいものがあります。その要因の一つに顧問先の中小企業の業績が良くないことがあります。今、日本の中小企業の7割を赤字企業が占めています。会計事務所にとって最大の課題は、顧問先である中小企業の業績を改善させることです。そこで今、注目されているのが顧問先企業の「自計化(経理業務の効率化)」です。自計化が顧問先企業の業績改善の契機となるのです。

 税理士業界にとって「自計化」という言葉は、なにも新しいものではありません。以前から、従来の申告業務や記帳業務だけでは事務所経営が行き詰まると意識していた一部の先進的な会計事務所では、積極的に顧問先企業の自計化を進めてきました。それは少数の事務所に過ぎませんでしたが、現在、顧問先企業の多くが業績不振に悩むなか、顧問先企業の自計化を進める会計事務所が急激に増えています。

 「自計化」とは、領収書や請求書などの原始伝票の整理から帳簿記帳、仕訳入力といった経理事務までを顧問先企業で行ってもらうことをいいます。IT化の進展によってパソコンや会計ソフトが低価格で市販されており、特に今の会計ソフトは、経理や簿記に慣れていない人でも簡単に会計処理ができるようになっています。

 ですから、顧問先企業に自計化を進めることは、それほど難しい時代ではないのです。顧問先企業の自計化は、会計事務所、顧問先企業双方に大きなメリットがあります。自計化が注目されているのは、顧問先企業の業績アップの大きな武器になることを、多くの事務所が意識し始めたからにほかなりません。


顧問先にとっての「自計化」のメリット

 まず、顧問先にとっての「自計化」のメリットは次のようなものが考えられます。

1)資料の正確性の向上

 会計事務所に記帳を依頼した場合と比べて、「現場感覚」のある自社内のほうが、実際の事業や取引などの情報について、詳細・正確に理解できます。ですから、自社でのほうがより正確な資料を出せる可能性が高くなります。

2)自社の経営状態のリアルタイムな把握

 一般に、会計事務所に依頼した場合は、1ヵ月ごとに資料を渡して月次の資料を出してもらうことになりますが、顧問先側から資料を提出し、その月次報告を提出してもらうには、平均1.5〜2ヵ月かかります。それでは、経営改善や経営計画策定といった経営判断のためには時間がかかりすぎます。自計化をすれば、リアルタイムで試算表が出るようになり、経営の施策も立てやすくなります。

3)経営者や経理担当者のスキルアップ

 自計化によって、経営者や経理担当者は、“数字”をより理解できるようになり、経営上の問題点があれば、より早く発見し解決することが可能となります。また、会計とパソコンを勉強することも求められますから、今後の業務に役立ち、仕事の効率化も図れることになります。経理担当者のスキルアップは、企業の大きな財産となります。


会計事務所にとっての「自計化」のメリット

 顧問先の「自計化」は会計事務所にも次のような大きなメリットをもたらします。

1)顧問先と会計事務所とのより親密な関係の構築

 これまで月次決算書は毎月持参したり送付するだけでしたが、今後、自計化という目標に向かって双方の担当者や経営者が、アドバイスをしたり要望を聞いたりといったコミュニケーションの場が生まれます。したがって、協力体制が生まれ、顧問先と会計事務所はより親密な関係となります。

2)業務の効率化と事務所職員のスキルアップ

 これまで会計事務所で引き受けていた会計処理を顧問先で行うわけですから、自計化は職員の作業の減少、ひいては業務の効率化につながります。当然、今までと同じ人員でより多くの仕事ができるようになり、事務所職員の教育訓練の時間もとれるようになります。職員のスキルアップは、会計事務所のサービスの質の向上につながりますから、顧客満足度を高めることができます。

3)より付加価値の高いサービスの提供

 自計化によって、顧問先、会計事務所に多くのメリットがありますが、最大のメリットは、顧問先企業の業績アップのための時間や労力を生むことができることにあります。業務の効率化によって生まれた時間と労力を、より付加価値の高いサービスに使うことができます。月次決算は早く処理され、タイムリーな情報が出ますので、適切なアドバイス、決算対策や事業計画の策定など、より質の高い情報・サービスの提供が可能になります。


企業は経営に関わる具体的なアドバイスを望んでいる

 中小企業庁が毎年発表している「中小企業の会計に関する実態調査」結果の最新版(2010年11月発表の2009年度版)によると、中小企業が会計専門家に望むサービスは、「決算書類等の分析、経営指導・助言等」が56.9%ともっとも多く、次いで「会計処理の指導等」(22.5%)、「決算書類の作成」(16.7%)などとなっています。

 中小企業の経営者は、会計専門家に対し、会計処理や決算書類の作成だけでなく、作成した決算書類をもとに、経営に関わる具体的なアドバイスを望む傾向がうかがえる結果となっています。

 そのような意味で、顧問先中小企業の要望に応えるためにも、改めて顧問先の「自計化」を考える必要があると思います。自計化は今や時代的な要請です。自計化なくしては顧問先企業の業績向上は望めないという強い意識を持って、顧問先の自計化を進める必要があります。

 このIT化の時代においては、性能がアップしたパソコンや会計ソフトが手軽に入手できます。ですから「自計化」は、何ら特別なことでも難しいことでもありません。必要なのは、会計事務所が中小企業の要請を踏まえ、意識を変えることではないでしょうか。

 
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