経営者の姿勢
Tone at the Top 企業責任と説明責任の伝播 CONVEYING RESPONSIBILITY & ACCOUNTABILITY スザンヌ・マハデオ 著
By Suzanne Mahadeo 不正防止の基礎知識 パート2 経営者は、健全な就業環境を構築し、企業責任と説明責任を伝播させることにより、社内不正を防ぐことができる。しかしながら、それは気の利いた倫理規範よりも労力を要するものである。 不健全な就業環境 (NEGATIVE WORK ENVIRONMENT) 不健全な就業環境においては、従業員の意欲(モラール)や会社への忠誠心が低く、全く存在しない場合もある。このような状況下では、従業員に会社を守ろうという責任感が欠如しているため、不正行為を犯しやすい傾向にある。 アメリカ公認会計士協会(AICPA)の報告書「経営者による不正対策プログラムと統制:不正防止・発見のためのガイド」(Management Antifraud Programs and Controls: Guidance to Help Prevent, Detect Fraud)によると、不健全な就業環境を招く要素には以下のようなものがある。
健全な就業環境 (POSITIVE WORK ENVIRONMENT) 健全な就業環境は従業員の意欲と忠誠心を高め、不正を抑止する効果をもたらす。AICPAの上記報告書によると、健全な就業環境の下では、より多くの従業員が組織に被害を与えるような不正行為に消極的(reluctant)になる。 従業員が、組織に対して肯定的な感情を抱く限り、不正行為は減少する。健全な就業環境を醸成し維持していくために、経営陣は以下の点に留意すべきである。 ・目標、成果と連動した評価、報酬システム ・均等な雇用機会の存在 ・チーム重視で協同的な意思決定方針の奨励 ・専門的に運営される報酬、訓練プログラム 組織に対する忠誠心の類型 (TYPES OF WORKPLACE LOYALTY) 組織に対し高いレベルの忠誠心を感じ、行動に表わす従業員が、不正行為を犯す可能性が低いことは明らかである。ACFEとAICPAが共同作成したビデオ「不正と経営者の姿勢」によれば、職場における忠誠心には以下の3つのレベルがある。
投資者が重視する事項 (INVESTOR’S CONSIDERATION) 組織の成否を批評的に検証する際には、株主が目指す目標に留意することが必要である。今日の投資者やアナリスト、アドバイザーは、投資対象先を評価するにあたって、組織の評判や倫理的気風に関する印象を詳細に検討するようになってきている。ヒル アンド ノウルトン(Hill & Knowlton)による「Corporate Reputation Watch 2004」の調査結果によると、投資家が重要視する事項の上位4項目は以下のとおりである。
企業責任と説明責任の伝播 (CONVEYING RESPONSIBILITY, ACCOUNTABILITY) 経営者が、個人的責任、および企業責任と説明責任に関するメッセージを従業員や投資者に伝えるためには、以下のようなステップを踏むことが重要である。
(AICPA(アメリカ公認会計士協会)監査基準委員会の不正対策タスクフォース(Fraud Task Force)の委託により作成された、AICPAの報告書「経営者による不正対策プログラムと統制:不正防止・発見のためのガイド」(Management Antifraud Programs and Controls: Guidance to Help Prevent, Detect Fraud)のコピーの入手をお勧めする。(http://www.aicpa.org/download/antifraud/SAS-99-Exhibit.pdf) 正式な倫理規範への単なる依存は禁物である(DON’T RELY ON JUST FORMALIZED CODES) 従業員に倫理規範の冊子を単に配布するだけで、その内容を生かし、解釈するための手本を示さなければ、従業員は疑問となるような事態について、必ずしも道徳的に分析するとはいえないものである。倫理的判断が求められる状況は複雑であり、倫理規範の範囲を超えた、特定の注意を要するものも多い。企業が禁止事項のチェックリストに過度に依存するようになると、従業員は日々の業務における複雑な倫理的問題に対する判断能力を失い始めてしまう。従業員が直面し得る、倫理的な判断が求められる状況をすべてリストアップすることは不可能であり、またそれを試みることは、従業員を「倫理規範で禁止されていない事はやっても構わない」という結論に導いてしまうかもしれない。 組織のリーダーに対する提言(SUGGESTIONS FOR CORPORATE LEADERS) ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)の経営学部において、学部長であるスティーヴ・サルブ博士(Dr. Steve Salbu)と学長であるステファン・P・ゼルナック・ジュニア(Stephen P. Zelnak Jr.)によれば、組織内に健全な倫理的気風を醸成し維持していくために、組織のリーダーが取ることのできる4つの手段は以下のとおりである。
従業員は、経営者に進むべき方向を示して欲しいと願っている。よって、経営者は、従業員に対する自らの言動に敏感でなくてはならない。経営者が倫理観の高い姿勢を示すことにより、不正行為による損失を削減し、従業員の忠誠心や意欲を高めることができるのである。不正の防止は業績の進展をもたらす。そして、その取り組みは経営トップから始まるのである。
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