(2017年 3月)
記帳・経理代行こそ会計事務所の最適ビジネス!会計事務所にとって、従来からの基幹業務である記帳代行は、事務所によって「やる」「やらない」のスタンスが異なる。クラウド会計の進行によって、記帳代行から経理代行へとビジネスを高められる時代がやってきた。記帳・経理代行に対する中小企業のニーズは依然として高い。会計事務所ビジネスモデルの変革ともいえる記帳・経理代行の大波に「乗る」か「乗らない」か。決断しないと生存競争に打ち勝てなくなる。 「記帳・経理代行」セミナーが全国で満員御礼
当社で2月に全国で開催した「記帳・経理代行の組織づくりと業務の仕組みを大公開」セミナーは、東京、名古屋、大阪、福岡、どの会場も満員だった。 これらは、同セミナー参加者の声の一部。記帳・経理代行に対する、会計事務所の関心と熱意の高さが伝わってくる。 右下のグラフは、同セミナー参加者に行ったアンケートで、セミナー参加のきっかけを調べたものだ。 ・記帳・経理代行をもっと効率化したい 記帳・経理代行の効率化4つのポイント
記帳・経理代行でボトルネックとなるのは、業務効率である。業務効率化のポイントとして、次の4つが挙げられる。 1.「担当制」から「分業制」にする
多くの会計事務所では、顧問先ごとに担当者が存在し、顧問先に関する記帳から試算表・決算書・申告書作成、それら資料の説明など、1人の担当者が一手に引き受けている。記帳・経理代行業務で担当制を敷くと、業務が属人化してしまい、効率が悪化する。 効率的に記帳・経理代行業務を実施している会計事務所では、記帳代行、給与計算、請求書発行、振込代行など、業務別に担当者を設けている。 例えば、記帳代行の入力担当者は、全クライアントの入力作業を行う。担当業務を集中させることで、その業務においてエキスパートになれるのだ。作業パターンが定型化されているので、パートタイマーやアルバイトでも業務を任せられる。 2.業務内容をカスタマイズせず、オーダーメイド化する
また、効率化のために業務内容を顧問先ごとにカスタマイズせず、基本的にはオーダーメイド化して、どのクライアントも同じ勘定科目やルールを適用する。 3.入力作業を正社員からパートタイマーにシフトする
正社員である職員が入力作業まで行っていては、確実に採算割れになる。入力や事務などの作業類はパートタイマーに依頼して、職員には入力内容のチェックと顧客とのコミュニケーションに集中させ、生産性を上げることが重要だ。 4.記帳代行を請け負う先の規模、業種、エリアを絞る
例えば5千万円未満、1億円未満など年商規模に区切りをつけ、零細規模の事業者のみ記帳代行を受注するなどのルールを決めておくとよい。入力作業をパートタイマーやアルバイトに担当してもらう前提ならば、例えば美容院、飲食店、コンビニエンスストア、歯科医院、整骨院など、会計処理が簡単な業種に限定することが、生産性アップにつながる。また、基本的には顧問先を訪問せず、事務所に来てもらうスタイルにしたい。エリアを事務所の近隣に絞ることも戦略上大事になってくる。 記帳・経理代行業務は効率化が命。仕組みをつくって運用することが成功のカギを握るのだ。 顧問料の概念が覆される高単価を実現
続いて、「サービスの高単価化」について検証したい。 記帳代行を行うと、通常の顧問料に記帳代行料金という固定収入がオンされるケースもある。固定収入を増やしていくことで事務所の経営体質が安定化し、高収益型の事務所へと近づく。 記帳代行の業務はパターン化でき、専門知識がない初級スタッフでも入力作業ができる。昨今の人手不足で優秀な人材がなかなか採用できなくなっている会計事務所にとって、高収益を積み上げられる数少ない手段のひとつと言ってもよい。 さらに経理代行となると、これまでの顧問料という概念が覆されるほどの高単価が実現する。 これまでも本紙で紹介してきたが、米国会計事務所では、クラウド会計を活用して、経理代行と財務代行(CFOサポート)というサービスを行い、1ヵ月あたり約25万円もの高額報酬を実現している。ここまで高額報酬だと、経理代行は記帳代行の延長線上の仕事ではなくなっているのだ。 経理代行とは、記帳や会計、経理、給与計算、請求書管理など、小規模事業主がお金まわりで困っている仕事はすべて引き受ける。ビジネスになくてはならない高付加価値サービスを提供しているからこそ、起業間もない小規模事業者からでも、月に25万円もの報酬を受け取ることができるのだ。自前で経理社員を雇うことを考えると、25万円という金額は決して高くはないだろう。 会計事務所が30人未満の中小企業に対して経理代行を行うと、企業は本業に集中できるようになる。新たなビジネスの創出や新規顧客の開拓に多くの時間を割くことができ、業績向上が望める。長い目で見ると、会計事務所への報酬アップも期待できるだろう。 クラウド会計を活用した記帳・経理代行業務を収益の柱にすることで、会計事務所は次のフェーズに進める。生き残るためには、ビジネスモデル変革の大波に「乗らない」という選択肢はない。 |