税理士業界ニュース
(2017年 1月)

「第5回会計事務所のビジョナリーサミット2016」開催レポート

 会計事務所の成長は、職員の活躍にかかっている。会計事務所の成長は、自発的に動いて事務所に貢献する職員の増加に比例する。2016年11月25日(金)に開催した「第5回会計事務所のビジョナリーサミット2016」のテーマは「職員が活躍すれば事務所は自ずと成長する」。「職員が活躍するための仕組みづくり」と「事務所の経営戦略策定」に役立つ講演に400人超の申込みがあり、当日は大盛況だった。

今年で5回目となる会計業界の先進的なイベント

 2012年にスタートした「会計事務所のビジョナリーサミット」は、今回の開催で第5回を数える。「会計事務所のビジネスをどう成功させるのか」「3年後の強い事務所づくり」をテーマに著名講師陣が講演し、講演で得た知識を事務所で活かす方法について参加者同士で話し合う。インプットとアウトプットの両方ができる会計業界随一の先進的イベントである。

 第5回のテーマは「職員が活躍すれば事務所は自ずと成長する」。事務所の成長に加速度をつけるにあたって不可欠な「職員」にスポットを当てた。

 ビジョナリーサミット午前中は「成長の壁を乗り越えた3人の税理士」と題して、成長の壁にぶつかり、それを乗り越えた3人の税理士にご登壇いただき、当時の悩みと解決方法をお話しいただいた。

  • ・「1億円以上を生み出す会議サポートの商品化」 御堂筋(税)
  • ・「新卒採用をきっかけに会社を次のステージに」(税)鶴田会計
  • ・「成長の壁を乗り越え90名の組織体制を確立」(税)さくら優和パートナーズ

 午後の部では「職員が活躍するための仕組みづくり」について、4つの会計事務所が活動事例を紹介した。それぞれ事務所で活躍している職員も講師として登壇したので、職員目線からの事務所経営についても学べる講演であった。

  • ・「簿記も知らないスタッフがExcel操作だけで年間20社を担当するには」No.1(税)
  • ・「新拠点に進出して55件の新規顧問先を獲得!」成和(税)
  • ・「職員のみの営業で年間50件の新規顧問先増を実現」(税)中山会計
  • ・「3年間で資産税案件3.5倍! スタッフ主導で事務所の売上を伸ばす『斎藤式任せる術』」(税)斎藤会計事務所

今回のビジョナリーサミットは職員にフォーカスしたテーマだったこともあり、所長と職員が一緒に参加した会計事務所が目立った。なかには10人以上の職員とともに遠方から参加した事務所もあり、「職員の活躍」が関心の高いテーマであることがうかがえた。

 以下に、複数の職員と一緒にビジョナリーサミットに参加した会計事務所の声を紹介する。どのような課題を解決しようとしたのか、そして、何を得ようとして、職員との参加を決めたのか。事務所経営の参考になるだろう。

・職員の考え方や行動が変わるならどんな研修よりも安くて効果的!
A会計事務所
 私は東京のセミナーに行く機会が多く、その話を常に職員に伝えていました。しかし、私の言葉では感度が低いのではと思っていました。現在の会計業界の立ち位置や、今後やるべきことを理解してもらい、これまで私が指示して取り組んできたことがちゃんと合っていることを確かめてもらいたいと思い、男性職員と総勢13名でビジョナリーサミットに参加しました。
 職員たちは実際に参加して、円卓で他の会計事務所さんの職員の方と話す機会があったそうです。製販分離や職員営業など、当事務所が行っていることを、まだ実践していない事務所があったそうで、うちの事務所が少し進んでいることに気づいてくれました。
 考え方やモチベーションに関する研修は、全員で参加するといいと思います。13人分の参加費や旅費等を合わせると、負担は小さくありません。しかし、職員の考え方や行動が変わってくれるのなら、安い出費です。どんな研修よりも効果的だと思います。
・経営計画の方向性を確め、整合性がとれていることを確信
M税理士事務所
 今回のビジョナリーサミットは、職員に関するテーマだったので、事務所職員と一緒に計4人で参加しました。専門特化(メディカル、介護、農業、相続)、ネットサポート、経営支援の幹部を人選しました。
 ビジョナリーサミットはどの講演も当社に関係あるテーマでした。特に当社と同じ地方事務所の事例は大いに役に立ちますね。
 当社は12月決算で、秋口から部署ごとの経営計画をとりまとめ、年始に経営計画を発表します。そこで毎年、ビジョナリーサミットに参加し、方向性が合っているかを確かめています。今回は事務所幹部も参加しているので、経営計画の整合性がしっかりとれたと確信しています。
職員がセミナーに参加すると経営改善を行いやすい

 「職員が自発的に動いてくれない」。これは多くの所長税理士が嘆く言葉の一つである。「営業するのは所長1人」「資産税の実務をできるのは所長1人」「採用面接を行うのは所長11人」という状態では、会計事務所の成長・発展は見込めない。

 実務やマーケティング、事務所経営などの知識・ノウハウを学ぶために、セミナーへ参加したことが一度くらいはあるのではないだろうか。事務所の成長を計画的に考えている方は、セミナーで学んだ知識を職員に共有することもある。ただセミナーのノウハウを話しても、職員にまったく響かないとお嘆きの先生が多くいらっしゃるようだ。そんなときは、職員も一緒にセミナーに参加するのが手っ取り早い。

 本紙編集部がビジョナリーサミットの参加者に取材を行ったところ、職員がセミナーに参加するメリットは4つあることがわかった。職員と一緒に参加された事務所の声を集めているので、ぜひ一読してほしい。

  • 1.職員の行動改善に直結する事例を学べる
    ビジョナリーサミットのように職員が登壇する講演は所長だけの講演と比べ、職員が理解しやすい。「何が問題なのか」「どう行動改善するのか」が、職員目線で語られるので職員の行動改善に直結する。
  • 2.事務所内での情報共有時間を短縮できる
    情報共有するための会議時間や資料を作成する時間を短縮して、事務所内にセミナーで得た情報を共有できる。活動内容の抜け漏れが減り、次の行動を起こしやすい。
  • 3.セミナー内容をより一層理解できるようになる
     長時間のセミナーだと、聴くべきパートやポイントを職員と分担して参加することで、セミナー内容を広範囲で理解することが可能になる。参加する職員が多ければ多いほど、この効果は大きい。
  • 4.セミナーで得たことを行動に移しやすくなる
     成功事例セミナーに参加すると事務所を良くするためのプロセスを学べる。複数の職員と一緒にセミナーに参加すると、気づきを行動に移す際に職員との共有がスムーズにでき、実行しやすくなる。

 職員が自発的に活躍してもらいたい会計事務所は、ぜひ所長と職員が一緒にセミナーへ参加することをお勧めする。行動と考えに変化が生じ、かけがえのない人材へと成長することが期待できる。