税理士業界ニュース
(2016年10月)

自社株対策・事業承継で 顧問先の流出を食い止めよう!

なぜ、税理士は顧問先の事業承継に及び腰になるのか?

 事業承継に強みを発揮する税理士は、さほど多くないのが現状だ。ボトルネックとなるのが「自社株対策」である。

 周知の通り、非上場株式の評価方法は複雑である。数十年にわたって黒字経営を続けている企業であれば、評価額が億単位に上るケースも珍しくない。中小企業オーナーが何の対策も打たず相続を迎えると、現預金や不動産などの資産が少ないなか、自社株だけで評価額が数億円に達し、相続税の納税資金に困窮するという悲劇が起きてしまう。自社株式を後継者に承継する際には、相続税や贈与税の問題がついて回り、判断ひとつで税額が大きく変わってしまう。そのため、事業承継を敬遠する税理士が少なくない。

 ある会計人はこのように語る。「税理士が事業承継対策に消極的なのは、やる理由がないからという見方もあるでしょう。事業承継対策が必要な顧問先は優良法人です。法人税の申告業務をこつこつと行っていれば、事務所経営上困りません。また、事業承継対策の適正な報酬金額を理解していない経営者が多く、税理士が望む報酬金額と折り合いがつかないことも、事業承継対策を積極的に扱うのに、二の足を踏ませています。万全なリスクヘッジを図り、適正金額の報酬を得る仕組みを整えることが、事業承継対策をビジネスにする最低条件です」

事業承継を切り口とした顧問先離れが起きている

 昨今は金融機関が大手税理士法人と組んで、中小企業に事業承継や自社株対策を積極的に提案しているのが目立つ。セミナーを開催し、事業承継の案件へとつなげ、融資を実行するというのが一般的なビジネススキームだ。中小企業の減少は預金・融資残高の縮小につながり、銀行側も大きなダメージを受けている。事業承継支援というひと手間をかけてでも、取引を継続したいと考えているのだ。

 金融機関のネームバリューとマーケティング予算は、一会計事務所とでは比較にならない。中小企業オーナーは、会計事務所が事業承継の支援をしてくれることを知らなければ、金融機関からの事業承継の提案を受け、金融機関が指定する会計事務所に替えてしまう可能性すらあるのだ。今まさに、事業承継を切り口にした顧問先離れが起きていると言えるだろう。

 最近の金融機関による事業承継の営業攻勢について、ある会計人は次のように警鐘を鳴らす。「銀行が提案する事業承継や自社株対策は、銀行の利益が優先され、結果的に企業オーナーの問題解決につながっていないのでは、という声も聞こえています」

 問題解決につながらない事業承継対策は、中小企業にとって致命的な損失である。会計事務所は顧問先を守るという観点からも、自社株対策の入口にあたる株価シミュレーションを提案し、事業承継対策の正しい入口を示してあげることが必要なのだ。

従来の株価評価ソフトは相続税申告にフォーカス

 また、税理士が事業承継に及び腰になるもうひとつの理由として、従来の株価評価ソフトの使い勝手の悪さが挙げられる。

 多くの株価評価ソフトは相続税申告にフォーカスしたもので、表計算をベースにしている。見栄えやデザインが洗練されていなく、申告書の添付書類のような雰囲気の帳票が目立ち、顧客に提示してもなかなか満足感を与えられない。あくまでも株価評価と相続税申告を目的としたソフトとなっており、事業承継案件獲得という観点では機能していないのだ。

 顧客の立場になって考えてみよう。多くの株価評価ソフトは、相談時に会計事務所から説明を受けたときには理解したつもりでいても、あらためて持ち帰ってきた帳票を見るとよくわからないというケースは珍しくない。従来の株価評価ソフトは、顧客と会計事務所、双方の満足度が高いとは決して言えないのが現実だった。

 顧客である中小企業オーナーの本音は「複雑で見づらい資料なんていらない。当社の株価がいったいどれくらいなのか、簡単に知りたい」ではないだろうか。

 そんなシンプルなニーズに対応して開発されたのが、11月にリリースする株価評価ソフト「自社株シミュレーションplus(仮)」である。

クラウド型でどこでもシミュレーションが可能

 「自社株シミュレーションplus(仮)」は、2015年にリリースしたクラウド型相続シミュレーションソフト「相続シミュレーションplus」の姉妹版。相続財産のうち自社株の評価にセグメントし、中小企業オーナーの相続・事業承継の問題解決を支援する。「相続シミュレーションplus」と同様にクラウド型ソフトで、どのパソコンでも利用可能。事務所でも訪問先でもどこでも使え、新しい情報を聞いた時点で、すぐにインプットできる。

 たとえば、所長先生が移動時間中に手持ちのタブレット等でシミュレーションソフトにログインしてシミュレーションの入力や分析をすることも可能。顧客との面談中でも、ヒアリング内容を持参のノートパソコンやタブレットに入力するだけで、即座に診断できる。

 「自社株シミュレーションplus(仮)」はクラウドなのでデータ保存が無制限。顧客の過去の診断データとも簡単に比較できる。IDも複数持てるので、職員も同時にソフトを利用でき、業務効率が劇的に向上する。

 まずは事業承継予備軍にあたる顧問先に対して、自社株評価を提案してみよう。自社株の評価額がわかるだけでも事業承継対策への意識が高まり、案件につながることが期待できる。

 実務に不安があるなら、リスクを冒してまで自分ですべて手掛ける必要はない。事業承継対策に精通したネットワークと連携することで、真の問題解決が実現するのだ。

 自社株対策を突破口とした事業承継対策をメニューに加えることで、会計事務所は顧問先離れを防ぐことができる。手軽に問題解決にあたれる「自社株シミュレーションplus(仮)」を活用し、相続・事業承継案件を獲得して差別化を図り、事務所の収益を改善していただきたい。


相続シミュレーションplus