税理士業界ニュース
(2015年11月)

クラウド時代を生きる 会計事務所の新機軸
「第4回 会計事務所のビジョナリーサミット」開催レポート


全国から約200名の先生方が集結

 「会計事務所のビジョナリーサミット」は、今年で4回目の開催を迎えた。会計業界の最新動向に加え、これから何が必要なのか、どういう戦略を取るべきなのか、将来のビジョンがわかるということで、毎年多くの参加者が集う。今年は10月20日(火)、東京・品川インターシティホールにて行われ、日本全国から約200名の税理士および職員の方々が集まった。

 今年のテーマは、「会計事務所のクラウド革命(実践活用編)」。世の中ではクラウド化が加速度的に進行しており、その変化のスピードはすさまじい。遅れていると言われている会計業界にもその波は確実に押し寄せ、もはや避けて通ることのできないものとなっている。

 参加者からは、「数年前からクラウドに興味はありましたが、技術がありませんでした。どうしたらいいかと思っているうちに、クラウドが必要不可欠な時代になってしまいました。お客様からもクラウドソフトの問い合わせがきます。これまでのソフトだけでは無理だと感じています」(谷隆之税理士事務所 所長 税理士 谷隆之氏)という声を聞いた。感度の高い先生方たちには、すでにクラウド化への対応がひっ迫している様子が伺える。

 そこで今年のビジョナリーサミットでは、特別講演として、会計業界外からマネーツリー株式会社の代表取締役ポール・チャップマン氏と、日本マイクロソフト株式会社の業務執行役員エバンジェリスト・西脇資哲氏のおふたりをお招きし、昨今のクラウド事情について講演いただいた。また、多くの先生方に成功事例を披露していただき、参加者の事務所の発展、そして顧問先の発展に貢献できるような内容をご用意した。

 このビジョナリーサミットは、参加者に気づきを共有していただくために、座席は円卓にし、講義の合間に約10分間の円卓会議を挟んでいるのも特徴である。ただ講演を聴くのではなく、同業の先生たちと意見交換を行い、積極的に参加できるのもサミットの魅力のひとつだ。


クラウドの進化による業務効率化と業務変化

 広瀬の基調講演、ポール氏、西脇氏の特別講演に共通していたのは、クラウド時代はすでに始まっており、現在進行形であるということだ。

 「今年の新春感謝祭ではクラウド元年と述べたが、10ヵ月経った今、クラウドの変化のスピードは3ヵ月で1年分の速さで進んでいる」と広瀬が述べれば、ITの最先端を行く日本マイクロソフト社の西脇氏も「クラウド元年だと、言われ続けてきましたが、クラウド元年はすでに過ぎています」と話した。もはやクラウドの導入に迷っている時間はないということだ。

 クラウドがもたらすメリットは多々あるが、最も大きなメリットのひとつとして生産性の向上が挙げられる。クラウド会計による業務の効率化が会計事務所の業務自体を変えていくということである。記帳代行サービスはバッチ処理からリアルタイム処理へと進化し、入力作業の負担が減った分、経理代行もしくは財務部長代行として、経営サポートへとシフトしていく。

 これまでも会計事務所の働き方の変化について言及してきたが、働き方の変化は顧客との新しい関係性を生む。顧客に付加価値を与えられる存在になることが、これからより必要になってくる。経理部門を一手に引き受けることにより、中小企業の経営者が本業に専念できるようになれば、経営者にとって欠かせない存在になるのだ。

 ポール氏は講演の中で次のように語った。「これまでの仕事の30%は自動化され、50%は人工知能が行うようになる。人間は残りの20%の付加価値を与える仕事をしなければならない」と。会計事務所の仕事はまさにその20%でなくてはならない。それができなければ、多くの統計が示すように、なくなっていく仕事となってしまうだろう。当日、実際にこれらの講演を生で聴講した方は、その温度感と重要性を感じられたに違いない。


参加者の多くから刺激になったとの声

 すべての講演が終わったあとは、懇親会の時間が設けられ、参加者同士の情報交流の場となった。おなじみとなったワイン抽選会も行われ、大盛況のうちに今年のビジョナリーサミットは幕を閉じた。

 参加者からは「時代の流れに乗っていかなければ、時代遅れになってしまうと感じています。時代の流れをとらえ、自分独自で何ができるかを常に考えていかなければいけないと思っています」と1日の講演から、感じ取った声をいただいた。

 多くの方が「刺激になった」と口をそろえた今年のビジョナリーサミット。来年1月19日(火)、20日(水)には第12回となる新春感謝祭を行うことが決定した。今回、残念ながらご参加できなかった方はぜひ参加してみてはいかがだろうか。現在の会計業界を知り、これからどうなっていくのか、何が必要かがわかるだろう。そして、成功している多くの先生方の活躍を目の当たりにすることで、刺激になることは間違いない。