(2015年7月)
広瀬元義のAAMレポート2015 米国取材で浮き彫りになったクラウド導入後の会計事務所の近未来 クラウド会計が普及したら、会計業界はどうなるのだろうか。 一歩先行く答えがアメリカに存在することは、今号の特集記事から読み取れたのではないだろうか。このレポートでは、これまで弊紙が米国会計事務所に取材して得た情報を再構築し、クラウド会計導入後の会計事務所の事例とともに、近未来の会計事務所のビジネススタイルを解説する。 「経理代行」「財務代行」で月25万円の高額報酬を実現 「1ヵ月あたり約25万円が相場ですが、ひと月で約80万円いただいているクライアントもあります」 こう語るのは、昨年11月の「ビジョナリーサミット2014」で特別講演を行った、トーマス・S・ボーン氏。経理代行と財務代行(CFOサポート)というサービスを行い、高額報酬を実現している。 経理代行では、記帳や会計、経理、給与計算、請求書管理など、小規模事業主がお金まわりで困っている仕事はすべて引き受ける。 経理作業を一手に引き受け、正確な会計データを提供することで、クライアントは本業に集中できる。これは経営者にとって何物にも代えがたい。経理作業から開放され、正確なデータを提供されるので、重要な意思決定を迅速に行えるようになるのだ。 財務代行では資本金のプランニングや融資サポートなど企業の意思決定を支援。クライアントからその価値を評価されている。 1ヵ月25万円の報酬というと、日本では脅威的にも思えてしまう。しかし、ここまで付加価値のあるサービスを実践すると、小規模事業主からでも、月25万円前後の報酬をいただけるという。 経理代行業務は、これまでのインフラで会計事務所が行おうとすると、物理的な負担が大きい。作業量が多く、それに応じたマンパワーを要する。しかし、クラウド会計の普及で段違いに業務がやりやすくなった。 クラウド会計によって、いつでもどこでも入力できるのはもちろん、銀行口座の取引情報は自動的に取り込まれるので、リアルタイムでクライアントの経営状況を把握できる。 クラウド会計の普及が、経理代行の作業部分をドラスティックに省力化し、従来よりも小さな負担で、これまで以上の成果をもたらすことを可能にしたのだ。 顧客が求めるサービスを提供して価値を認めてもらう クラウド会計を導入した米国会計事務所では税務、監査以外のフィールドに業務範囲を広げ、価格競争に巻き込まれずに事務所経営を行えるようになった。 米国会計事務所は報酬を時間単位で決定することが一般的。経理代行や財務代行といった業務は年に1回の監査業務よりは単価が低いものの、継続して受注できることから、最終的な収益が大きくなる。 会計事務所サイドが、クライアントが求めるサービスを提供することで、会計事務所としての価値をクライアントに感じてもらうことができるのである。 会計事務所の価値は、クラウドによって確実に上がった。従来は「データ入力」「編纂&検証」「レポート」で、過去のデータを入力することに比重が置かれていた。クライアントとはシステムが統合されていないので、データ入力に労力を費やし、3回以上のチェックを要する。プロダクトは単純な財務レポートの域を出ないというのが現状ではないだろうか。 従来の会計事務所のサービスはここで完結していた。しかし、日本でもアメリカでも、こうした作業に対する価値は低下している。 現在、クライアントから高付加価値サービスだと認められるのは、リアルタイムの情報を読み解き、分析・解釈し、それをベースにアドバイス・コンサルティングすることである。これによって、クライアントのビジネスオーナーから信頼されるパートナーとして認められ、相応の報酬をいただける。クラウド会計の導入によって、会計事務所は次のフェーズに進める。これまでの「手続き屋」から「パートナー」へとポジションを高められるのである。 [経理代行で手掛ける業務] ●売上管理 ●請求書管理 ●仕入、経費の管理 ●銀行口座情報の照合 ●給与計算 など経理にまつわる業務全般
[財務代行で手掛ける業務] ●資金調達 ●資金繰りコンサルティング ●財務管理…など |