税理士業界ニュース
(2015年6月)

会計事務所は今こそ「原点回帰」
「決算」を武器にして報酬アップを図ろう!


中小企業経営者は決算数字から見える問題点と改善策を求めている

 これまで激化の一途にあった会計事務所の低価格競争だが、2012年にピークを迎え、ここへきてようやく価格が下げ止まったかのように思える。

 しかし、下げ止まったからといって一気に報酬単価がアップするわけではない。顧客に何らかの付加価値を与えるように見せないと、報酬増は実現しない。

 では、どのようにして報酬単価を上げればいいのか。

 それは会計事務所が「原点回帰」して「決算」を軸としたサービスを打ち立てることである。


価格競争を経て会計事務所は「手続き業者」になった?

 激しい価格競争を経て、会計事務所はどうなったのか。「記帳代行」「決算申告」をベースとした低価格な仕事ばかりを手掛けるようになったのではないだろうか。

 型通りの手続き業務で申告書を作成しておしまい」というようなルーチンワークに終始していては、中小企業経営者は会計事務所のサービスに価値を感じない。会計事務所を、成長に不可欠な「パートナー」とみなさず、記帳や申告といった作業を頼む「手続き業者」ととらえてしまう。

 すると、価格をできるだけ安く抑えたいと思うようになり、サービス内容が少しでも割高に感じると、仕入先や業者を替えるように、あっさりとWebサイトで見つけた他の会計事務所に乗り換えてしまうのだ。

 ここでひとつ提案する。今こそ会計事務所は「原点回帰」を図るべきである。

 原点回帰とは何か。それは、税務・会計サービスを軸として、そこから付加価値を高めることだ。つまり、「決算」を活用して報酬アップを図ることをおすすめする。

 多くの税理士にとっての苦手分野のひとつが「報酬単価アップ」ではないだろうか。元来、価格交渉が得意な税理士は少ない。さらに、これという付加価値サービスがなければ、単価増は望めない。「質より量」と、低価格の顧客をより多く獲得しなければいけなくなるが、新規獲得そのものも得意ではないので、ずるずると減収を余儀なくされる。

 こうした負のスパイラルと決別するためにどうするか。会計事務所が最も身近にある「決算」を武器にすることが、報酬アップの切り札になるのだ。

 これまで会計事務所の付加価値サービスというと「経営計画」が挙げられた。高価なソフトを購入し、職員が操作の習得に多大な時間を費やした会計事務所は少なくないだろう。しかし、大半の会計事務所は「経営計画ソフトを買ったはいいけれど、全然使わずに眠っている」という状況に陥っていないだろうか。

 従来の「重厚長大型」の経営計画ソフトは、年商1億円、社員30人未満のスモールビジネスに主軸が移った会計業界にとって、もはや時代遅れの遺物でしかない。今の時代は経営計画サービスをリーズナブルな価格で気軽に受けられることが求められるのだ。

 こうした「お安く・お手軽」な経営計画こそ、現在の会計業界にマッチした付加価値サービスといえる。そして、スモールビジネス層に経営計画の必要性を感じてもらうための格好なサービスが「決算カウンセリング」である。これによって、会計事務所は経営者から大きな信頼を得ることができ、報酬アップが実現するのだ。

 当社が2012年4月に実施したアンケートによると「決算料の値下げ要求を受けたことがある」と回答した会計事務所は、実に6割に上った。これは、会計業界特有の「決算料」という仕組みに、経営者が納得せず、付加価値を感じていないことを表している。

 だからこそ、会計事務所は決算カウンセリングを行い、決算業務そのものに付加価値を与えることが求められるのだ。


経済状況の把握ができず新設法人の9割が10年以内に倒産!?

 会計事務所が決算カウンセリングを行う主なメリットには次が挙げられる。

●新規獲得の呼び水になる
●成約率が上がる
●成約単価が上がる
●職員のセールススキルが上がる
●マーケティング手法の幅が広がる

 ご存知の通り、新設法人の10社中9社が10年以内に倒産するという。これは、多くの企業が決算内容を自社の経営状況把握に活かす機会がなく、会社存続のための対策を取っていなかったことを表しているといってもよい。

 人間の場合、毎年健康診断を行い、身体の問題点や改善策等を把握する機会がある。会社も同様に毎年の決算カウンセリングで問題点を浮き彫りにして、改善策を見出すことができるのだ。

 こうした決算カウンセリングのサービスを最も行いやすいポジションにいるのは、ほかならぬ会計事務所である。会計事務所で作成した決算書をそのまま診断に使えばよい。会計事務所以外の者が行うとなると、まず決算書を預かることが高いハードルになるが、会計事務所なら全然問題がない。

 決算は会計事務所の主要業務のひとつ。どの会計事務所でも扱っている。特定業種・業務への特化や営業・マーケティングなどをこれから始めることと比べると、はるかに導入しやすい。

 導入にあたってのハードルが低く、たくさんのメリットがあるにもかかわらず、決算カウンセリングをセールスポイントにしている会計事務所は、まだまだ少ない。これから決算カウンセリングを事務所の付加価値サービスに掲げれば、他の事務所と十分に差別化が図れるだろう。


経営者の視点に立った決算カウンセリングとは?

 決算カウンセリングというサービス自体は、決して目新しいものではない。これまでも各社が決算カウンセリングのシステム等を会計事務所に提供してきた。しかし、従来の決算カウンセリングで使われる帳票類は、数字の羅列や単なる図表が並んでいるだけのものが多かった。

 大半の経営者からは「決算書の説明を受けても、会社が儲かっているのか、危ない状況なのかよく分からない」という声が挙がったかと思われる。数字ばかりが並んでいて、自社がどんな状況で、何が課題になっているのかを判断しづらくなっているという結果に陥っているのだ。

 この問題を解決するためには、経営者の視点に立った経営カウンセリングを行う必要がある。まず、見やすさと分かりやすさにはこだわりたい。デザインを見栄えよくするといった上辺の見せ方を工夫するレベルの話ではない。帳票のトータルデザインがストーリー性に満ちていることが求められる。

 最終的に経営者が知りたいのは、現状の課題とその解決策。最も重要な部分を分かりやすく手軽に説明することが、スモールビジネス層の経営者相手には大切だ。

 3月決算法人の申告を終えた今、会計事務所は「決算」というサービスを見直し、決算カウンセリングによる報酬アップを検討してみよう。


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