税理士業界ニュース
(2015年3月)

今そこにある「税理士懲戒処分」リスクに備えよう!

 税理士事務所経営上、最も大きなリスクのひとつが「税理士懲戒処分」。年々、処分件数が増加傾向にあるのをご存知だろうか。

 さらに近年は監督体制の強化、処分の厳格化が進行している。懲戒処分は名義貸しや脱税相談等に気をつければいいという次元ではない。今や、どんな税理士でも懲戒処分の地雷を踏み付けてしまう時代に差し掛かっているのだ。


新規拡大に積極的な事務所こそ対策が必要不可欠

「顧客から架空経費や売上除外を強要された」
「顧客の要求で給与支払報告書を改ざんしていた」
「小遣い稼ぎで友人の申告書を作成していた」
「書き損した総勘定元帳をメモ用紙に使い、普通ゴミで廃棄していた」

 たとえば、上記のような行為を事務所の職員が行っていたらどうなるか。義務違反行為に該当し、税理士懲戒処分を受けるかもしれない。税理士法第41条の2にあるように、使用人等に対する監督義務があるのだ。

 このように、税理士懲戒処分のリスクは、自らを律するだけでは防ぎ切れない。自分とは関係のないことでも、不意に降りかかってくる場合もある。

 特に新規拡大に積極的で、順調に顧客と職員を増やしている事務所ほど、懲戒処分リスクが大きくなり、対策が不可欠といえよう。


税理士懲戒処分リスク3つの増大要因

 ひと口に「懲戒処分」といっても、懲戒処分の種類は、税理士法第44条[懲戒の種類]に規程されており、「戒告」「停止」「禁止」いずれの処分も官報に公告される。「戒告」は業務継続に影響はないが、税理士としての信用を損なうことにつながってしまう。

 近年は税理士懲戒処分に対するリスクが大きくなっている。増大要因は3つ挙げられる。

1.処分件数の増加

 平成21年度から25年度までの間の税理士登録者数は4%の微増となっている。にもかかわらず、懲戒処分の件数は72%と大きく増えている。

2.監督体制の強化

 もうひとつは、監督体制の強化。懲戒処分が増えた統計結果を見ると、一見「税理士法違反行為が増えた」と考えられがちだが、実はそうではない。税理士専門官の人数増加や配置変更により、監督体制が強化されたために、税理士の懲戒処分件数が増加したと解釈できる。

 ポイントは次になる。

東京国税局の税理士専門官の数において、平成26年時点で平成15年から倍増。平成21年から43%増
●税理士専門官の配置を税務署から国税局へ変えた

 懲戒処分件数増加は、業法違反件数の増加ではなく、監督体制を質量ともに強化した結果。税理士業務の調査件数は増えることはあっても減ることはないと考えられる。懲戒処分件数は今後もさらに増加することが予想できる。

3.4月以後の改正

 さらに、今年1月30日には「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」の改正が告示され、4月1日以後に行った不正行為に係る懲戒処分等には、改正した処分内容が適用される。

 昨今の税理士懲戒処分をめぐる変化を受け、国税当局に取材を実施した。

 4月以後の不正行為に関する「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」の改正箇所は、次の通りになる。

●税理士業務の「停止」処分が「最長1年」→「最長2年」に延長
これまで税理士法第37条の「信用失墜行為」のカテゴリーに入っていた「非税理士に対する名義貸しの禁止」が、税理士法第37条の2として明定
税理士業務の停止処分を受けて、その処分に違反して税理士業務を行ったとき、税理士業務の「禁止」になる
税理士会の会費を正当な理由がなく長期にわたり滞納すると、戒告処分となる

 上記から処分内容の厳格化が見て取れる。税理士懲戒処分のリスクは高まる一方で、これまで以上に対策を講じる必要があるのだ。


税理士懲戒処分 考え方と事例及び対策