(2014年7月)
日米の会計事務所成長力の差はなぜ生まれたのか 米国で目にしたビジネスモデル「経理業務」に目を向ける 当社は毎年、AAM(米国会計事務所マーケティング協会サミット)に日本で唯一参加している。その際、米国の会計事務所が顧問先に対してどのようなサービスを提供しているのかを取材した。 今回取材した企業は不動産会社。家族数人で経営しているファミリー企業だ。 その不動産会社では経理を雇うよりも外部に経理を外注したほうが安く済むと考え、会計事務所に毎月3千ドルを支払い契約している。 3千ドル、日本円にして約30万円の月額顧問料を支払うその理由はなにか。アメリカの会計事務所は顧客のニーズを拾い上げ、経理の代行を請け負っているからにほかならない。 具体的にその会計事務所が行っている作業について話を聞いた。 「記帳の入力はもちろん、請求書のチェックも行います。また、お客様の口座に期日までに入金されたかの確認や、ペイチェックでの支払いをしたら実際に引き落とされているかの確認も代行しています」(会計事務所の担当者) 日本の会計事務所が監査や税務に関する業務にとどまり、経理業務を切り捨てた一方で、アメリカの会計事務所では経理分野にまで業務範囲を広げることで成長力を高めているのだ。 自計化は、会計事務所にとっての業務の幅を狭め、自らの首を絞めてしまっている。時代の移り変わり、顧客のニーズの変化とともに、現在の中小企業が困っている業務、サービスにフォーカスできなくなってしまっていると言い換えてもいい。 日本の会計業界よりもさらに競争が激しいアメリカにおいては、マーケットインの発想で顧客の要望について考えた。その結果が、広い業務範囲と高い成長力といえるだろう。 スモールビジネス層には自計化のニーズがない いま、会計業界にとってブルーオーシャンと言われるのは起業したばかりのスモールビジネス層。彼らのニーズは何だろうか。 「経理が面倒だから丸投げでお願いしたい」。 この一言に尽きる。ここには「自計化」「巡回訪問」の文字はない。一方で経理丸投げや記帳代行へのニーズは日に日に高まっている。 会計事務所がこうしたスモールビジネスを相手にして収益を得るためにはクラウドシステムの導入が欠かせない。ビジネスの仕組みそのものが変化したのだ。 クラウドシステムの普及は、会計業界に利便性と収益性といった業務革新だけでなく、ビジネス革新をもたらした。クラウドを「やらない」という選択肢は許されない時代が訪れている。 会計事務所は今まさに、これまでの自計化一辺倒のスタイルを見直す時期に差し掛かっているのだ。 |