税理士業界ニュース
(2014年4月)

急成長中のベトナム市場から、新たなヒントを手に入れろ!

 いまだ急成長を続けるベトナム市場。活気あふれるベトナムの地を拠点に、開業からわずか10年で200名の職員を抱えるベトナム最大規模にまで成長した日系の会計事務所がある。日本人初のベトナム公認会計士として活躍する蕪木優典氏率いるI-GLOCALグループとの共催で、7月20日〜24日にかけて視察ツアーが決定した。

 事務所成長の秘密はどこにあるのか、ベトナム市場はいまどうなっているのか。今後のビジョンと戦略を構築するためのヒントが満載の本ツアー。その最新情報をお届けする。


昨年に引き続き海外視察ツアー開催決定

 昨年夏に行われた「アメリカCPAツアー」に引き続き、今年も海外視察ツアーが決定した。

 今年の行き先は、経済的な急成長を遂げているベトナム。中国から東南アジアへと企業の海外進出のトレンドが移り変わっている中で、ベトナムを拠点に職員数200名・ベトナム最大級の日系会計事務所を構築したI-GLOCAL会計事務所との共催で行われる。

 I-GLOCAL会計事務所を擁するグループを束ねるのは蕪木優典氏(公認会計士)。2000年に日本人初のベトナム公認会計士として登録後、2003年に独立開業。わずか10年でグループ全体200名規模の会計事務所を作り上げた。

 日系初の実績を誇る会計事務所が成長したその秘訣には、事務所経営を成功させるヒントが詰まっている。


ベトナムの拠点を守るのは若干30歳の所長

 ベトナムに進出し、成功した会計事務所としてのみ、I-GLOCAL会計事務所を捉えると本質を見誤る。

 I-GLOCAL会計事務所からは、海外進出する・しないに関わらず、事務所経営を成功させるためのヒントをあらゆるところで感じられるはずだ。

 その一例は、ベトナムの拠点を任せている所長、實原享之(じつはら・たかゆき)氏だ。

 實原氏は大学卒業後、一部上場不動産会社を経て2009年にI-GLOCAL会計事務所に入社する。

 その後、アメリカCPAの資格を取得、蕪木氏の元で研鑽を積み、入社からわずか数年で150名のスタッフを擁するベトナム拠点の所長を任せられるまでに成長する。

 I-GLOCALグループが持つ成長の源は、この人材の育成力にもある。蕪木氏は實原氏を徹底的に鍛え上げた。

 「24時間一緒にいましたね。仕事をして、家に居候させていましたので、帰ってからも顔を合わせて。たまには『そうじゃないだろう!』と蹴り飛ばしたこともありました」(蕪木氏)

 この関係は上司と部下、経営者と社員という結びつきとは違う、まさに志を同じくする「同志」、ともに戦う「戦友」として教育し、實原氏もそれに応えた。

 ベトナムのような急成長市場や、激変期を迎えている会計業界のような世界で生き残るには、経営者と同じ発想で現場を導けるリーダーの存在が欠かせない。その好例が蕪木氏と實原氏の関係性だ。「種は優れた土壌で芽を出すわけではない。たどり着いた土壌に適応したものが生き残り、成長する」という言葉がある。事務所の「種(人材)」を結果の出せるよう適応させられるかどうか。それは所長の覚悟で決まる。


業界の敵は業界外にいる自らビジネスを作り出せ

 プライスウォーターハウスクーパース株式会社による「World Economy 2050」というレポートでは、ベトナムは将来、購買力平価ベースで世界第14位の経済大国になると予想されている。

 「今後、ベトナムが現在の日本と同じくらいの経済的規模へと成長する可能性は高いと感じています。その未来に向けて、どういう戦略やストーリーを描けるのかが成功の秘訣だと思います」(蕪木氏)

 国民の平均年齢が若く、内需が拡大中であること。真面目で勤勉な国民性であることなどから、かつての勢いを失った中国に変わる海外進出先として、ベトナム市場には大きな魅力が埋もれている。

 「これまでの会計事務所の経営は、誰かがすでに顕在化してくれたビジネスの後追いでもうまくいきました。でも、もうそうじゃないはないでしょうか。たぶん、この業界の敵はこの業界にいない。ビジネスは自分で作り出さなければいけない、そう感じています」(蕪木氏)

 本来なら、これだけの経済力を持ったのなら、アジア各国に日本の会計制度を輸出してるくらいでなければいけない。しかし、そうはならなかった。だからこそ、これを逆手に取ってビジネスにつなげられる。チャンスがあると、蕪木氏は言う。

 「日本は保守的だからこそチャンスがあると思っています。業界内の古い慣習を守ろうとすると社会のニーズを無視する結果になってしまう。社会が求めているサービスを他社に先駆けて提供できれば強いですよね」

 近視眼的な視点からグローバルな視点へのパラダイムシフト。そこにビジネスが埋もれている。