税理士業界ニュース
(2013年10月)

月に3件獲得したければ
「新設法人」とセットに仕組み化する「記帳代行」


 会計事務所が新規顧客を獲得する際に不可欠なのが新設法人マーケット。

 新設法人を顧客にする際、記帳代行のメニューは外せない。月に3件以上新規顧客を獲得したければ「新設法人」「記帳代行」をセットに『仕組み化』することが求められている。

 本紙ではこれまで幾度となく、新規拡大の重要性を発信してきた。新規拡大を積極的に展開するには新設法人マーケットは欠かせない。その観点から、新設法人からのニーズが高い記帳代行をサービスメニューから外すことは不可能である。月に3件以上新規顧客を獲得したければ、記帳代行は「やる」という選択肢以外ないのだ。

 なぜ、新設法人・新規開業は記帳代行に対するニーズが高いのか。1人または少人数でビジネスを立ち上げると、経理まで手が回らないからだ。そのようなスモールビジネスを顧客に取り込むにあたって、記帳代行というサービスをメニューに入れないのは、大きな機会損失になってしまう。

 特に10人未満の小規模会計事務所にとって最大の経営課題は新規顧客の獲得である。しかし、既に顧問税理士がいる企業にアプローチをかけ、「税理士を替えませんか」と提案して顧問契約を獲得するのは極めて難しい。それゆえ、「新設法人」と「記帳代行」をセットにして、営業・マーケティング活動を実践すべきである。

 「記帳代行」=「手間がかかる」と見られがちだが、近年のIT関係のインフラは著しく整備され、記帳代行業務をめぐる環境を変化させている。各種ソフトの発達やクラウド化、複数台のマルチディスプレイ、領収書を入れるだけでPDF化するスキャナーなど、各種インフラが整い、業務の効率化と負担削減が実現した。

 これらによって、会計事務所にとって記帳代行が、経営戦略上重要なサービスに浮上している。


仕組み化なき記帳代行は収益悪化の一途

 もちろん、どの会計事務所でも「新設法人」と「記帳代行」をセットにして新規獲得を進めればいいというわけではない。

 20人前後の中堅規模で、既に巡回監査と自計化の体制が整っている会計事務所の場合、これから新設法人と記帳代行に注力するのは、物理的に難しい。人手が足りず、収益性が下がることが懸念される。あえて記帳代行をやらないという選択肢を取るほうが現実的だ。

 では、新設法人と記帳代行をセットにして新規拡大を進めるにあたって不可欠なこととは何か?

 それは記帳代行の「仕組み化」である。これまで通り、何の仕組みも持たずに各担当者が自己の裁量で記帳代行業務を回していては、業務効率が落ち、収益を圧迫する。記帳代行を仕組み化することは、これからの時代、会計事務所が生き残る条件の一つといってもよいだろう。


中小企業の44.7%が自社で記帳を行っていない

 新設法人と記帳代行をセットにして新規顧客を獲得する必要性を、中小企業の経理処理の実態から見てみよう。

 中小企業庁による「平成22年度中小企業の会計に関する実態調査事業集計・分析結果」から、いくつかの統計データを紹介する。

グラフ1:経理財務担当の人員(代表者以外)

 グラフ1は「経理財務担当の人員(代表者以外)」を表している。7割の中小企業が経理担当者1人以下で、7%は社長が経理業務まで行っている。

 なお、同質問の対象を個人事業主にすると、84.2%が経理担当者1人以下で、15%は代表が経理を兼務している結果が出ている。こんな状態ではしっかりした経理業務は望めないだろう。

グラフ2:中小企業の経理財務担当者が担当している経理業務

 グラフ2では中小企業の「経理財務担当者が担当している経理業務」の実態を示している。「記帳と総勘定元帳の作成までを行っている」と答えた中小企業が55.3%(なお個人事業主では49.1%)。半数の中小企業が記帳を自社で行っていないことになる。

 また、約27%の中小企業(個人事業主では3割強)が納品書・請求書・領収書等の作成・保管を行わず、外部に丸投げしていることが読み取れた。

 こうした実態から、新設法人の設立サポートと記帳代行業務は不可分な関係にあり、セットにしてアプローチすることが必要だといえるだろう。