税理士業界ニュース
(2013年9月)

「税務調査に強い税理士」は生き残りの絶対条件

 「税務調査に強い税理士」は、差別化の大きな要素として挙げられる。ただ、これまでは「医業に強い」「資産税に強い」「飲食店に強い」「資金調達に強い」といった、数々の業種・業務特化と並立した扱いだった。

 しかし今の時代、税務調査に強くなることは、税理士にとって効果的な差別化方法になる。一方、税務調査に弱いことは、税理士にとって致命傷にもなりかねない。

 それはなぜか。税務調査対応は税理士にとって、顧問先から評価を受けやすいサービスだからである。

 現在、記帳や税務申告の業務は価格競争の渦中にある。「安ければ安いほどいい」と、一般消費財のような扱いを受けており、税理士の一般的なサービスに価値を感じていない経営者は少なくない。そんななかで顧問先に税理士に価値を認めてもらうには、税務調査に強くなることが得策といえるだろう。

 税務調査は「どれだけ追加で支払う税金を減らせたか」結果が目に見える。それゆえ、対応の良し悪しで税理士の評価と価値が大きく上下する。もし、顧問先が税務調査で何千万円、何百万円も請求されそうになったところを、税理士の交渉でその半額、もしくはゼロにまで減らすことができれば、顧問先は税理士に価値を感じ、価格が高くても喜んで報酬を支払うだろう。

 当然ながら、税務調査に立ち会って、調査事項上の事実を条文等に適用し、解釈して論理的に結論を出すことができるのは税理士のみ。税務調査対応は、他業種の参入を許さない最後の聖域でもあるのだ。

 一方、税務調査の対応がお粗末で頼りないと、お客様に不安を与えてしまい、顧客満足度が大幅に下落。顧問契約解除という事態も引き起こしかねない。

 事実、企業が顧問税理士を替える理由に「税務調査で味方になってくれず、税務署の言いなりだった」「税務調査の対応が頼りなかった」という、税務調査対応の不満が根強くランクインしている。

 特に現代のような税収不足では、税務調査が厳しくなっているのは周知の通り。顧問税理士の強力な支援なしでは税務調査は乗り切れない。それゆえ、税理士が「税務調査が苦手」なことは、事務所経営上の大きなリスクでもある。顧問先維持の観点でも、税務調査に強くなることが求められるのだ。


税務調査に強くなる「2つの方法」

 では、税務調査に強くなるにはどうすればいいのか。それは、税務調査の経験値を上げることである。

 経験値を上げるといっても、場数を多く踏むことだけではない。主に以下の2つの方法がある。

1.税務調査で想定される質問を戦略的に予習しておく

 税務調査対応は「出たとこ勝負」と「勘」だけでは強くなれない。想定される質問に対してあらかじめ答えを用意し、どのように調査をもっていくか自らイメージしておく必要がある。

修正申告を勧奨される前に自主申告をしたいが、どのタイミングで行えばいいか?
「シロ」「クロ」「グレー」の調査事項があると、どの順番で交渉すればいいのか?

など、シチュエーションを想定し、論理的に答えを導き出して用意しておくことが求められる。

2.税務調査の疑似体験を通じてイメージトレーニングする

 税務調査の場数は、税理士側でコントロールできない。なので、バーチャルに税務調査を体験し、起こりうる場面をイメージすることが大切。擬似体験を重ねることで、経験値が上がり、適切な対応が取れるようになるのだ。

 税務調査対応が巧みだと、顧問先の満足度は格段に上がる。「うちの税理士は税務調査に強い」と顧問先からの紹介増も期待できる。

 税務調査はどの税理士にも関係する業務。得意だと自負している税理士はより対応力を磨き、苦手な税理士はこの機会に学習し、付加価値アップを実現しよう。