税理士業界ニュース
(2013年8月)

拡大する相続マーケットの獲得には
ネットワークとブランディングが必須


 2015年の相続税改正によって約1.5倍に拡大すると言われている相続マーケット。

 会計事務所にとって一大チャンスといえる状況だが、ただ「相続専門」と謳うだけでは拡大するマーケット層を開拓するのは難しい。必要になるのは「相続に強い事務所」であることの後ろ盾となる、ネットワークとブランディングだ。


共通するのは「敷居の低さ」2015年はもう始まっている

 相続を専門とする税理士法人が次々と新たな試みにチャレンジしている。

 資産税に特化したある税理士法人は、不動産業者とタッグを組み、相続税課税の有無や課税額の目安、対策を説明するとともに、相続対象となる不動産の簡易査定などを無料で行うサービスを開始した。

 また、ある税理士法人は相続に関わる実務を一本化し、ワンストップで受注するパッケージを開始。金額も定額プランを用意するなど、誰にでも分かりやすいサービス提供を行っている。

 「当社では5月に『丸の内相続プラザ』をオープンし、相続の無料相談を行っています。」と語るのは、ランドマーク税理士法人の代表社員、清田幸弘氏だ。

 丸の内相続プラザでは、相続に関する情報を得られるほか、専門のスタッフによる無料相談が受けられる。開設以降、毎日ブースが埋まるほどの人気を集めている。

 相続への関心が高まりを見せる中、これをビジネスチャンスと捉え生前からの顧客の取り組みに力を入れている。「丸の内相続プラザでは月に2回、相続に関するミニセミナーを開催しています。相続に関して何もわからないお客様と顔を合わせたお付き合いをすることで、相続が発生した際にご依頼いただきやすくするための施策です。2年後を見据えて種まきを今行っているんです。」(清田氏)

 これらのサービスに共通するのは、相談に対する敷居の低さとシンプルさだ。2年後の相続税改正によって、これまで相続税とは無縁だった層を取り込み、将来の相続案件の獲得に備えた動きが活発化している。


相続専門と謳うだけではNG その後ろ盾はどこにあるのか

 その背景には、相続マーケットの拡大をビジネスチャンスと捉えているのと同時に、他士業や他業種からの流入に対しての危機感がある。

 弁護士、司法書士、大手都市銀行、不動産業者はもちろん、最近では地元密着の地方銀行も参入、2年後を見据えた競争は激しさを増している。「当社では他士業や他業種と争うというよりも、手を組んで協業していこうと考えています。」(清田氏)

 生き残りのための戦略として、正面からぶつかり合うのではなくネットワークとアライアンスを組み、相乗効果を狙う。これは相続ビジネスを取り扱う勢力が今後集約化していくことを示す。

 実務面だけではなくマーケティングの側面においても力を合わせることで顧客への説得材料とする。これから増えていく相続マーケットのターゲット層は、会計事務所のことなど右も左も分からない状態だ。その際に、ただ「相続専門の会計事務所」と謳うだけでは受注へと結びつけるのは難しくなっていくだろう。

 「相続への関心も高まり、雑誌やムックなども多く出版されました。それにともなって潜在顧客のリテラシーも高まっています。相続の実務が難しいことも、経験の少ない事務所に依頼したら損をしてしまうかもしれないことも、広く知られるようになってきました。」(清田氏)

 これまでは、相続が発生したら身近な会計事務所に申告を依頼して済ませていたケースが多かった。しかし今後増えるターゲット層は「身近な会計事務所」の付き合いすらなかった顧客層となる。

 彼らがどうやって会計事務所を探すのか。相談への敷居が低く、申告件数などの実績に安心感があり、広くアライアンスやネットワークを組んでワンストップで対応できる事務所に依頼するようになるだろう。結果として、相続案件に積極的ではなくスポットで受注していた会計事務所への依頼が減少すると考えられる。

 相続マーケットの拡大は、顧客層に安心感を与えられる一部の会計事務所に恩恵を与え、これまで特に力を入れてなくても受注できた会計事務所にとっては、痛みを伴う方向へと進むかもしれない。


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