(2013年7月)
広瀬元義のAAMレポート2013 「魚を欲しがる日本人と釣り方を覚えるアメリカ人」 島国だからというわけではないだろうが、日本人はとかく「魚」そのものを欲しがる。 一方でアメリカ人は、自ら釣り上げるための方法と釣り具にこだわるようだ。彼らの中に脈々と流れるフロンティアスピリットは、今でも健在なのかもしれない。 いま私は会計事務所のマーケティングについて話をしている。今回、ラスベガスで行われたAAM(米国会計事務所マーケティング協会)サミット2013を訪れて感じたいくつかのことがらを、皆さんにお伝えしたいと思う。 日米最新会計業界マーケティング事情 今年のAAMサミットのテーマは「Win Your Race- Inspire Innovation.Realize Results.」(競争に勝つ〜イノベーションを引き起こし、結果を実現する)だ。 毎回掲げられるテーマからも、現在アメリカの会計業界の課題が透けて見える。 2011年のテーマ「会計事務所を新たな高みへと導く」から、2012年のテーマ「行動を測定し、結果を追い求める」を経て、今回のテーマへとたどり着いている様子を見てみると、この1〜2年でより成果や結果を求める動きが活発化しているのがお分かりになるだろう。 これは集客から成約というプロセスの強化が昨今のトレンドだと語ったAAM元会長のサリー・グリック女史の言葉とも重なってくる。 「営業の重要性が増しています。ブランディングや評判だけでなく、いかに獲得するかが注目されているのです。マーケティングの最終的な目的はお客様を獲得することにあるわけで、その『獲得する』という根幹の部分の重要性が日増しに高まっているように感じます」 アメリカではもはやマーケティングは当たり前、視線はその先を向いている。現在は成約により力を入れているというのだ。 マーケティングとは事務所の見込み客を増やすためのあらゆる行動だ。いわば1対∞(無限大)の活動になる。 一方、セールス(向こうではビジネスディベロップメントと呼んでいた)は、目の前のお客様と成約する1対1のやり取りになる。 アメリカの会計事務所では、このマーケターとビジネスディベロッパーを別々に用意し、活動させている。 日本では未だに専任のマーケターを置けている事務所は皆無に近いだろう。日米両国の差はこれほどまでに広がっている。 SNSの活用も昨今のトレンドだという。LinkedInやTwitter、Facebookなどは格別新しいサービスではないが、1対1の成約を結ぶために必要な顧客との信頼関係を構築するために、重要なアイテムになっているそうだ。 いま、日本でも30代の若手税理士がWebマーケティングを駆使してこれまででは考えられないスピードで事務所を成長させている。 彼らは生まれて物心がついたときからコンビニがあり、パソコンがあり、携帯電話があった。40代以上の世代とは価値観も考え方も異なる彼らの台頭は、日米ともに著しい。 また、今後は顧問先となる経営者や起業家、個人事業主もこの世代が中心となっていく。彼らの価値観や考え方と共鳴できなければ、顧問先として成約するのは難しくなるだろう。 これからの時代は誰が作っていくのか、今一度考える必要がある。
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