税理士業界ニュース
(2013年4月)

スモールビジネス経営者の声から見えてきた会計事務所の課題とは?

年商500万円以上5000万円未満の企業は51%

 まず、グラフを見ていただきたい。中小企業庁「中小企業実態基本調査報告書」をアレンジした統計によると、平成23年度の全国の企業数合計は373万6512社(個人事業を含む)。このうち、年商1億円以上の企業を合計すると、わずか18%にとどまる。つまり年商1億円未満の企業が82%で、年商5000万円未満の企業は実に73%を占めるのである。

企業の年商別分布

 このうち、実際に税理士が顧客にしうる層として年商500万円以上3000万円未満をピックアップすると42%に達する。さらに年商500万円以上5000万円未満に広げると51%と過半数を占める。

 つまり、企業の大部分は年商5000万円未満のスモールビジネスなのが現状だ。Q−TAXではこのたび、3月6〜8日に開催された「第29回フランチャイズショー2013」にブース出展し、来場者であるさまざまな層のスモールビジネス経営者の声に耳を傾けた。


税理士を活用していこうと考える顧客をどう取り込む

 「税理士に望むことは、やっぱり税金に関する相談ですね。ごくごく基本的な相談です。太陽光発電の減価償却年数とかそんなレベル。ネットで見れば載っているのですが、ネットだけでは分かりづらいし信頼性に欠ける。だから税理士さんに気軽に相談したいんです。でも、先日税金の質問をしたら『ネットに出ていたので、それでいいと思います』と言われました。これじゃ、何のためにお金を払って頼んでいるのか分かりません」

 「会社を経営しているかたわら、個人で不動産を持っています。税金の面では、不動産を個人で所有したままがいいのか、会社に譲渡したほうがいいのか相談したいのです。しかし、税理士は高圧的で相談に応じてくれる雰囲気ではありません。『不動産に強い税理士』とホームページに出ているから選んだのに、怖くて相談できないのでは、まったく意味がありません」

 「税理士には『儲かる話』をしてほしいですね。どうやったら儲かるかを教えてほしい」

 以上の話からどのような印象を受けるだろうか。特に高度な知識やスキルを求めていないようにも読み取れる。ごく基本的な税務相談や経営上のアドバイスを親身になって行うという当たり前のサービスを実践すれば、顧客満足が得られるものだ。

 もちろん、このレベルにとどまらず、ニーズの先にあるウォンツ(要望)まで踏み込んだ提案ができれば顧客満足度はさらに向上する。しかし、先の声は、基本的な相談事やアドバイスを着実に実践できていない税理士が目立つことを物語っている。

 「自社の事業が不振なので、何かフランチャイズに加盟して心機一転しようと考えています。今の税理士には何も話していません。えっ、税理士ってそういう相談にも乗ってくれるのですか? うちの税理士にはそんな話をしても意味ないだろうな」

 イベント参加者からはこのような声も聞かれた。顧問先からこんなことを言われないためにも、税理士は目の前に広がるスモールビジネスの顧客層に何ができるかを、いま一度真剣に考えてみる時期に差し掛かっている。

 このフランチャイズショーへの出展者の多くは、会計事務所にとっての主な顧客ターゲット。彼らをどう事務所の顧客へと取り込んでいくのか、自事務所をアピールしていくのかが会計事務所の課題といえる。

 これまで会計事務所は待ちの姿勢で経営者たちの要望や声を集めてきたが、今後はそれでは上手くいかないだろう。積極的に見込み客の集まる場所へと足を運ぶ必要があるだろう。

 多くの経営者たちは、会計事務所がどんなサービスを提供してくれるのかを知らない。税理士を活用していこうという潜在的な顧客をどう取り込んでいくのか、会計事務所は真剣に考えていく必要がある。