税理士業界ニュース
(2012年10月)

景気対応緊急保証制度が11月に変更!
あなたの顧問先は大丈夫か?


 中小企業の資金繰りを応援する、景気対応緊急保証制度が11月1日に変更になるのをご存知だろうか?

 信用保証協会が100%保証してくれるセーフティネット保証5号は、昨年の震災で緊急避難的に原則全業種指定の運用を継続してきたが、今年11月1日以降は、業況が改善した業種については指定から外れることになった。これにより、対象業種は全体の4割も減少。これは中小企業の資金繰りに大きな影を落とす。来年2013年3月には金融円滑化法が終了。中小企業の資金調達をめぐる環境が苛酷なものとなる。

 あなたの顧問先は大丈夫だろうか?


信用保証協会100%保証から外れる業種が4割もある!?

 景気対応緊急保証制度とは、業況が悪化した中小企業の資金繰りを円滑にするため創設された制度。中小企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が100%債務保証をするというものだ。信用保証協会が銀行への返済を全額保証してくれるため、銀行から中小企業への融資が円滑に行われる利点がある。

 同保証制度は、昨年の大震災を受けて緊急避難的に原則全業種指定の運用を継続してきた。しかし、今年の11月1日以降、業況が改善した業種については制度の指定業種から外れることが決定。指定外になる業種は全体の4割もあるといわれる。よって、会計事務所の顧問先の中にも、同制度の指定業種から外れ、借り換えを検討しなければならないケースが出てくるものと思われる。実は「待ったなし」の状態なのだ。

■グラフ1 緊急保証制度の保証承諾を受けた中小企業の業種構成

 ご存じの通り、これまで信用保証協会保証付融資は、融資先の借入金額に対して、信用保証協会が原則として100%保証していた。しかし、2007年10月から責任共有制度がスタートし、信用保証協会の保証付融資は、一部の保証を除いて80%保証となった。金融機関側は「保証協会が全額保証してくれるから」と審査を通してきた融資案件でも「万一のとき、20%は自らが負担しなければいけない」と審査が厳しくなり、信用保証協会付融資の案件数と保証金額が減少したのは事実である。

 そんななか、11月に数少ない信用保証協会100%保証の制度融資の門戸が狭められる。よって、景気対応緊急保証制度の指定業種からもれてしまう企業は、10月末までに同保証制度を活用しておかなければならないのだ。

 中小企業にこうした情報を知らせるのは、会計事務所、顧問税理士にほかならない。しかし、税理士や会計事務所は顧問先の借入金の状況についてどこまで把握しているのだろうか? 資金調達をめぐる環境変化は、11月の景気対応緊急保証制度の変更だけではない。来年3月末には金融円滑化法が終了する。これによって、中小企業の倒産が増加することが予想される。多くの会計事務所の経営に大きな衝撃を与えることは、火を見るよりも明らかである。

■グラフ2 緊急保証制度を利用しなかった場合の支障


既存顧問先向けと新規顧客向けに円滑化法終了対策を考えよう

 金融円滑化法終了に備えて会計事務所は何をすべきなのか?

 それは、既存顧問先向けと新規顧客向けの2通りある。まず既存の顧問先に対してすべきことは、借入金に関するヒアリング。景気対応緊急保証制度の融資を受けているかどうか、金融円滑化法によるリスケを行っているかどうか等を把握しておく必要がある。そして、金融円滑化法が終了すると、リスケを延長してもらえず、事業停止を強いられる企業が多く出てくることを伝え、危機感を持ってもらうことが重要だ。

 続いて新規顧客向け。金融円滑化法終了は、新規顧客獲得にも有効である。金融円滑化法終了対策セミナーを開催し、顧問先のみならず多くの企業に資金調達対策の重要性を知らせ、見込み客の増加につなげることができる。そこで早急に融資が必要な企業に対して支援し、無事資金を借りられることができれば、高確率で顧問契約へと結びつく。

 これからの時代、中小企業が円滑に銀行から融資を受けられるようになるには税理士の力が不可欠。顧問先と銀行に同行し、担当者と密接な関係を築くことが税理士の必須事項になりつつあるのだ。